ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

山のまちは日暮れがはやい

知らないところへ行くことが好きです。

テーマパークとか観光地とか楽しさの約束されているところではなくて、「どこそれ?」とインスタ女子が眉をひそめるようなところへ行きます。そういう場所にも、美しい景観、美味しい食べ物、素敵な人がいることを知っているのです。見つけに行くのです。


きょう訪れたのは内陸のまち。

海がなくて、ショッピング施設がいくつかある街中をビュンビュン車がとばしていました。でも、まちをぐるりと囲むのは畑で、その向こうには大きな山が連なっていました。まちの真ん中を国道が走っていて、一本入れば湖のある広い公園がありました。


太陽を隠すあいにくの曇り空だったけれど、波が穏やかで、雲の切れ間からのぞく青と、スポットライトのように降りるオレンジの陽光が綺麗でした。


このほとりで、さっき手に入れたお気に入りのパン屋さんのスコーンをかじりたい。


湖の景観をいかしたカフェもあったけれど、風を感じながら、太陽が山へ帰るのを見守りたくなりました。急いで国道まで戻ってコンビニコーヒーを購入。今時期の日の入りは16時過ぎ。まだまだ余裕と高を括って…失敗。戻ったときには、オレンジの陽光は山の影ににじんでいました。


海のまちに暮らしているので、海に沈む太陽を見慣れています。海の高さはいつもかわらないから、夕陽は予測される日の入り時刻を守ってくれるけれど、山のまちでは違うようです。高さの違う山々に囲まれて、時には山が雲の帽子をかぶっていて、太陽が隠れる時刻も早まるのです。


山のまちは日暮れがはやい。

仕方なく、スコーンとコンビニコーヒーを片手に、夕陽の名残のなかでこの文章を書いています。