ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

空を見るくらいしかない

中学からの友だちは、卒業すると、北海道で最も人口の少ない村に引越しました。美術を学びに行ったのです。地元の高校に進学したわたしにとって、家族と離れ寮生活をしながら好きなことを学ぼうと決意をした彼女が、すごく眩しく感じられました。結局わたしは、大学進学も就職も、北海道を出る決意がつかずに今は北海道の左上にいます。

 

彼女が進学した村へ行きました。本当に小さな村でした。お昼を食べようと食堂へ立ち寄ると大行列。村内に飲食店が少ないのと、観光客がその味目当てに訪れるのと、彼女の母校の生徒さんたちがお昼ごはんに訪れるのとで、1時間待ち。順番を待ちながら、彼女に連絡をとりました。

「なにか、見るべきものはある?」

彼女は少し考えて、

「空を見るくらいしかない」

と返信。最高。

 

きっと、日本中世界中で、気まぐれに訪れても空を見るくらいしかないまちが、たくさんあります。わたしが住む北海道の左上だって、頑張って観光向けにPRをするけれど、雨や雪の観光オフシーズンに、「なにかある?」と言われても返答に困ってしまいます。わたしが力を入れて説明すればするほど、それは好みの天秤にかけられて、距離が生まれるのです。

 

だからわたしも、

「空を見るくらいしかない」とか、

「海を見なよ」とか、

もっと気軽に、気が利いて最高なPRをしたいと思いました。訪れたその人にとって最高の地域経験を心に刻んでほしい、そして、繰り返し訪れてほしいと思いました。

お昼を食べ、村唯一のミュージアムを見学し、空を見ました。初めての音威子府村は、それはそれは最高でした。

f:id:ia_a:20200705175635j:image