ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

なんで夜にその話するの?

夜はいけません。

星がでていようが、月が大きかろうが、おもしろおかしい深夜番組をやっていようが、1人、膝を抱えて過ごす夜はいけません。

夜というやつは、わたしがいる部屋だけぽっかりと世界から切りとって、この地球上にたった1人ぽっちの気分にさせます。目の前のことなんて永遠に終わらないような、終わったところで誰も見向きもしないような、空虚な気持ちを連れてきます。1人で立ち向かう不安ははかりしれず、このまま、わたしの内側に巣食う気持ちに飲み込まれてしいそうになります。

そういう夜が、時たま、突然にやってきます。

わたしばかりではなく、きっと、誰しもに訪れているでしょう。

 

でも、絶望してはいけません。

きちんと顔を洗って、歯を磨いて、あたたかい寝巻に着替えて、ふわふわの毛布の間にすべりこむのです。頭を空っぽにして、朝まで目をつむっているのです。このとき、いろんなことが頭をよぎるけれど、決して動じてはなりません。動じたところで、好転する未来など見えないのですから、じっとじっくり、夜が過ぎるのを待つのです。

そうしていると、朝がきます。

窓の外は明るく、陽射しはやわらかく、身体はすくっと動くし、頭はさえています。わたしたちはそうして、強大な”夜”という敵に打ち勝ちながら、生きていかねばならないのです。

 

だから昨夜、スマホの通知欄に、1度スワイプしたくらいでは読みきれないメッセージを見つけたとき、わたしはそっと電源を落としました。

メッセージの送信者は、きっと、そんな夜の淵にいるのです。

夜はいけません。