ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

リップ

ないわけでは、ないのです。

朝のお化粧は、胸を躍らせます。新しい玩具を買ってもらうような、美しい景色の真ん中に立つような、純粋な期待が胸をワクワクソワソワさせます。仕事に行って帰ってくるだけの日なんてなおさら、1日で最も気分の上がるひとときです。

 

リップをひくのは、すっかりお化粧し終えた後。アイシャドウもアイブロウもチークものせてしまってから、その日の1本を選びます。服装やアイメイクは、青や赤やブラウンやモノクロと想像で組み合わせられるけれど、リップばかりはなし得ません。赤やピンクやベージュやオレンジ、絶妙な色の違いはもちろん、マットやツヤやパールや色持ちがさまざまです。それらをきちんと見比べるまでは、安心して唇にのせられないのです。いつも、立ち並ぶリップの上で、人差し指と親指をさまよわせます。2、3本つまんでキャップを開けては戻し、1本を選びだします。

 

リップがないわけでは、ないのです。ただし、選択肢が多いのも困りもの。

 

先日、ずっと気になっていたリップをいただきました。自宅に立ち並ぶリップを思いだして、購入を迷っていたリップ。誕生日にいただいた、サプライズプレゼントのリップ。内側はパキッとしたカラー、外側にはパールが散る2層タイプのスティックリップ。目の覚める鮮やかな赤と、青くきらきらちらちら輝くリップ。

 

最近は、専らそのリップを選びます。

指をさまよわせることなく、まっすぐ唇にのせ、みぎ、ひだり、みぎと、朝の陽光を受ける青のパールを確かめます。

 

しっくりくるリップが、ないわけではないのです。ただ、選択肢が多いのも困りもの。そうしたときに決め手となるのは、いかに気持ちを引き上げてくれるか。もらったときの喜び、発色美しい赤、青パールのきらめきをもったそのリップが、わたしの胸を一層躍らせるのでした。