ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

良い映画体験 ~お酒編~

その映画は、春から夏、秋にかけてのおはなしです。

春、彼女はノースリーブにジャケットを羽織って、お酒に顔を赤くして、屈託なく笑います。ぐい、と傾けるチューハイの缶、ダラダラと眺める深夜のテレビに、親近感を覚えました。

夏、早い日の出に青白くなる繁華街の光景はどこか懐かしく、湿度の高いべたべたの風、それでもどこか寒々しい朝のにおいが漂ってくるようです。ベロベロに酔っぱらって呂律も足どりもぐだぐたの彼が、羨ましくなりました。

雨が降って季節が進んで、ぐずぐずにぬかるんだ足場の悪いフェス、泥まみれの彼ら。秋の気配を感じました。

 

大好きな映画です。

リアルな男女の心理を、J‐POP、ロック、バラードといった挿入歌が彩って、過去の思い出と未来の希望を見ているようです。繰り返し見るうちに、ただ見るだけに留まらず、鑑賞環境にこだわるようになりました。部屋の照明を落としテレビの明かりだけにして、安い発泡酒のタブを引きます。高いビールとかワインとか、悪酔いの心配がない美味しいお酒はあるけれど、この映画には、安い発泡酒こそしっくりくるように思いました。明日の寝不足と二日酔いまで含めて、この映画の楽しみです。

 

映画を見る、感動する。それに留まらずさらにアクションを起こさせることを「良い映画体験」と呼んでいます。たとえば、映画の考察をしたり、登場したものを食べたくなったり、登場人物たちを真似たくなったり、映画の世界に没入したり。

この映画は、いわば、良い映画体験「お酒編」です。

モテキ

モテキ

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video