ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

2021年3月11日

朝、眩しくて目を覚ましました。近ごろ陽がのぼるのが随分はやくなって、青白い静かな朝が、明るく浮足だってそわそわしています。

目覚ましの鳴る前に起きられるなんて、少し得をした気分。ふっと大きく布団を蹴ると、やっぱりまだまだ、冷たい空気。シャワーがお湯になるのを待って頭からかぶると、手足の先がじんとします。髪を乾かして歯を磨いて、化粧品をひろげて、身支度タイム。

 

スマホの通知が、大好きなバンドのアルバムリリースを知らせていました。そういえば、10年前からつくり続けていた曲を、節目としてアルバムにまとめるという告知を見た気がします。今日だったんだ。化粧しながら聞くことにします。

 

そうだ、10年前はこの曲だった。そうそう、翌年はこれ。あ、5年目のこの曲が大好きで、でもCDになっていなくて、動画投稿サイトのPVをずっと眺めていたっけ。9曲目、10曲目は、このアルバムリリースに際して作られた新曲でした。アイラインを引く手が止まりました。引いたばかりの線が、あふれる涙で滲んでしまったから。

 

東日本大震災から10年。

わたしは当時高校生で、受験を終え、実家で日常を貪っていました。突然の揺れに、当時飼っていたうさぎを抱え、外へ出たのを覚えています。道南に暮らすわたしたちだって飛び上がった揺れなのだから、震源地はさぞ揺れただろうとテレビをつけると、まるで作られたみたいな光景でした。

 

メディアが報じる情報を、そこに暮らすひとを思うと、胸がぎうと詰まる思いがしました。あの時の気持ちを、忘れていました。

 

わたしは被災地にいませんでした。

だから、東日本大震災がどのようなものであったか、そのすべてを知りません。

けれど、忘れてはなりません。

いつもどおりの朝、仕事に向かう準備をしながら、少しやわらかくなってきた陽の光のなかで、この歌とともにあの日を想いました。

 

3.11

 

かくれんぼ

かくれんぼ

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