ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

恋愛の入るスキが1ミリもなかった青春映画

今夜の金曜ロードショーは「スタンド・バイ・ミー」だそうです。大好きな映画です。

 

行方しれずになった少年が実は列車事故に遭っていて、その死体が今もなお転がっているらしい。

そんな噂話をもとに始まった、「死体探しの旅」。アメリカ、オレゴン州を舞台に展開される少年たちの心の機微が鮮やかに描き出されます。友情や家庭環境、将来の不安を抱えながら、人通りのない田舎道を進む彼らの姿は頼りなげで美しく、引き込まれます。物語は2時間ほど、たった3日間の出来事だけれど、思春期のすべてを描ききっているし、もしかしたら、思春期なんてたった3日の冒険に過ぎないのかもしれないと思わせられました。この3日間が彼らの人生の土台となっているのだから、涙せずにはいられません。

 

最も気に入っているのは、恋愛要素が一切なかったところ。

青春映画といえば、恋はつきものです。一夏の甘酸っぱい恋愛は最高のスパイス。でも、彼らの冒険に異性の入るスキはありませんでした。おそらく、ここに「恋愛」という要素が入ってしまえば、物語は一挙に煩雑に、陳腐なものになっていたでしょう。恋愛を描くというのは、それほど危うく重厚であると、わたしは思うのです。スパイス程度に加えるなら、無いほうがマシ。それを、「スタンド・バイ・ミー」という青春映画は証明してくれました。

 

それぞれ重たくのしかかる心と向き合う4人の少年が、町を飛び出して探し求める死体。それは、忘れたくても忘れられない、生涯に刻みつけられた夏の思い出です。

夏の始まるこの時期、見られることに感謝。とっくに思春期を過ぎたわたしの2021年も、彼らの夏と同じくらい印象深いものでありますように。

 

スタンド・バイ・ミー [Blu-ray]