ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

わたしたちは仲良しではない。

「『絶対来てほしいの!』と目をキラキラさせながら誘われる結婚式、どう断ります?」

小気味良く音をたてて落ちる髪の束を眺めながら、わたしが言いました。鏡越しにうつる美容師さんはちょっと考えるように「うーん」と言って、

「わたし、20代の結婚式で断ったことないかも」

と一言。なるほど。

 

20代半ばに差し掛かって、結婚式の招待をいただくことが増えました。もちろん、心からお祝いしたい相手はいます。厚かましく「結婚式には呼んでよね」なんて約束を取り付けている子もいます。でもそれと同じくらい、目をキラキラさせて誘われる結婚式をいかに穏便にお断りするか、頭を悩ます場合もあります。

たとえば、生活のフィールドが全く異なり、3ヶ月に1回コミュニケーションする程度の子とか。大学卒業以来、SNSのやり取りのみで顔を合わせていない子とか。もちろん、楽しくお酒を飲んだし、車で遊びに行った過去はあります。けれど、わたしがその彼女らの結婚式で、共通の友人もいない故によく知らないテーブルに座らされ、よくわからない乾杯をする意義が、どうしても感じられないのです。

 

こう書くと、なんて意地が悪く情が薄い女なんだと思われるかもしれません。けれど、おそらく彼女らだって、わたしがいま誰と付き合っていようが、どんな夢を抱いていようが、いかに苦悩のなかにいようが、知ったこっちゃないのです。そんな彼女らのために交通費と宿泊費をかけて、時間を割き着飾ろうとは、とうてい思えないのでした。

 

「でも、20代から友だちを篩にかけることないと思うよ」

美容師さんが言いました。たしかに。

それにきっと、わたしは結婚式へ行きます。根が無鉄砲なので、綺麗に着飾ってよく知らないテーブルでよくわからない乾杯をするという「未知の経験」は、わたしの好奇心をくすぐるのでした。

 

ただ、結婚式をする彼女とわたしの距離に、変化はないでしょう。

わたしたちは、仲良しではない。