ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

あのころ感じた胸の高鳴りは

小学生のころ、今とは比べ物にならないくらい本を読んでいました。フィクション作品が大半で、魔法学校からヴァンパイア、殺人鬼まで多種多様な世界をのぞきました。気に入った本は作家買いをして本棚に並べます。その1つが「ぼくらの」シリーズでした。

 

中学生の「ぼくら」が大人たちのしがらみや社会の理不尽に反旗を翻すストーリー。中学生という、当時同年代であった彼らが破天荒な作戦によって大人たちをギャフンと言わせる展開に、心揺さぶられたのを覚えています。

彼らの物語が、アニメ映画になりました。

しかも、作品の舞台は北海道の赤平や沼田の炭鉱町を参考に作られているといいます。期待に胸がおどりました。

 

美しい炭鉱町の背景。

ドラマチックな挿入歌。

生き生きと躍動する彼ら。

素晴らしい映画でした。

素晴らしい映画でしたが、違いました。

わたしがあのころ感じた胸の高鳴りは、しんと鳴りを潜めていました。

 

トントン拍子で進むストーリーに、現実離れした印象を受けたせいでしょうか。

登場人物の多さに、彼ら一人一人への共感ができなかったためでしょうか。

それとも、わたしが大人になってしまったからでしょうか。

 

空を切るようなスカスカした気持ちになって、エンドロールを眺めました。いまのわたしは、小学生のころと比べ物にならないくらい本を一切読みません。魔法学校だってヴァンパイアだって、殺人鬼だって面白そうだなと思う世界です。けれど、もっとのぞいてみたい世界が、いまのわたしにはあります。

あのころの胸の高鳴りは、あのころ読んだ本ではもう感じられないかもしれません。けれどまた別のものによって、いまもなおわたしの胸はおどっています。