ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

共感

「絶対、あいちゃん好きだと思う!」

上司が興奮気味に言いました。聞くと、今回の取材相手。東京でお仕事をされていたけれど、ご実家の都合もあり早期退職されて地元に帰ってきたという男性でした。ひとまわりもふたまわりも歳上の男性。どこにわたしが好きそうなポイントがあるのかと思いきや、趣味で架空生物をモチーフにした陶芸作品をつくっていらっしゃるとか。なるほど。

 

わたしは、趣味で彫刻をしています。彫刻家・安田侃さんの考え方に惹かれて、美唄にある彼のアトリエで定期的に大理石を彫っています。考え方というのは「自然とひと、そして時間とともにある彫刻」という作品に対する向き合い方。アトリエでは「心を彫る授業」と題して作業スペースを貸し出しています。

 

だから正直、上司が「絶対、あいちゃん好きだと思う!」という彼の作品に、足の先から頭のてっぺんまで共感するかといえば、そうではありませんでした。同じ立体作品といえど、陶芸と彫刻。モチーフも異なります。上司に連れられて彼のアトリエにお邪魔したわたしは「すごいですね!」「いいですね!」しか言えませんでした。

すごいし、いいなあと思うのです。思うのですが、その先はわたしの勉強不足。それ以上、はなしを広げられませんでした。

 

けれど彼は、つたないわたしの質問に胸を張って迷いなく、それでもやわらかな口調で答えてくれます。彼の作品には理由があって、誇りがあるのでした。

 

そういう行動をとりたいものです。芸術に限らず、暮らしのなかの何事も。

理由があって、誇りがある。いいと思うからやる。やりつづける。

その姿にこそ足の先から頭のてっぺんまで共感して、上司が「絶対、あいちゃん好きだと思う!」と言った理由がわかりました。