ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

tanka

仕事でTwitterを運用しなければならず、大学ぶりのTwitterアプリを再インストールしました。当時つかっていたアカウントが残っていて懐かしさに覗いてみると、大学時代の友だちが数人、その頃のまま呟いていました。多くは大学ですれ違ったら挨拶する程度の仲だったのでそっと見守るに留めておいたけれど、ひとつだけ、たまらずいいねしました。

 

五・七・五・七・七のリズムで綴られる言葉。ハッシュタグで「tanka」と添えられたツイートは、幼稚園のときに近所に住んでいた彼女のものでした。

 

物心ついたころ、わたしの父に連れられて一緒に映画を見た彼女。小学校にあがると同時にわたしの家が引っ越して、それ以来文通する仲になった彼女。文通が途絶えてからも年賀状のやひとりは続いていて、大学時代のある日、気まぐれに連絡をとってごはんに行ったことがきっかけでTwitterをフォローしていたのでした。ごはんに行った、という記憶はあるけれど、なにを話した、という記憶はありません。

彼女はいまも、文字を紡いでいました。

 

正直、幼稚園時代の交友ですから彼女がどのような人間か、理解しているとはいえません。文字のやりとりだけが彼女とのすべて。どんな音で、どんなリズムで、どんな表情でしゃべるのか。何を目で追い、何を感じて、何に微笑むのか。わからないことばかりの彼女ですが、ただ、20年あまりを経てわかるのは、彼女とわたしはいまも、文字にしがみついて生きているのだということ。彼女に宛てた手紙が、いまはこうして、ネットの海に放りだす宛名のない文章になっただけ。それだけで、なんだか妙に納得がいきました。

 

彼女が紡ぐ五・七・五・七・七のリズムは大変美しく、胸のうちに深く沈むようでした。せめてものお返事として、わたしはいいねを送りました。