ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

わたしたち、いつ会ったんだっけ?

時刻は午前3時30分。毛布をかぶって、そのつるつるとした毛並みを撫でながら、彼女の話に相槌を打ちます。暖房の設定温度が低いのは、わたしが「普段家でも暖房高くしてないから、わざわざ暖かくしなくていいよ」と言ったから。平日、明日も仕事という、冬の入りしなのことです。

 

音楽の話、映画の話、仕事の話、夢の話。彼女とは、いろんな話をします。

話すたび夢中になって、ついつい時間を忘れて、ほら、もうこんな時間。

「私たち、いつ会ったんだっけ?」

ふいに言うので、ふうむと考えます。

 

わたしたちは、いろんな人がいる飲み会で初めましてをしました。彼女はひととおり飲むと、日付が変わる直前に1人さっさと「次があるんで」と帰って行きました。大きな輪の中で出過ぎず引きすぎず楽しく話す人だけど、掴みどころがなくて、わたしはちょっと苦手だなと思ったのでした。

 

実際彼女は、楽しく話す人でした。大人数でも1対1でも、変わらず楽しく話しました。むしろ、2人きりの方が彼女の毒が気兼ねなく吐きだされて、わたしは好きでした。

裏表なく、すっきりとした人でした。彼女は出会ったばかりの頃のわたしを「腹の中が見えずミステリアス」と言いました。掴みどころがないのはお互い様でした。

 

明け方、彼女が隣で鳴らすギターを聞きながら眠りにつきました。3時間ほどして目を覚ますと彼女も眠っていたので、飲み散らかしたウイスキーの瓶とおつまみの容器を片付けて、そっと鍵をかけてドアポストから中へ落とし、帰宅しました。それは、いつも彼女がする帰り方でした。後からケータイを見ると「うちでもついに鍵ポストが見れて感動した」とメッセージが入っていました。わたしはこっそり笑いました。