オススメ映画2021
2021年に見た100本弱の映画のなかから、広くオススメしたいベスト10をご紹介します。「わたしが見た100本」なので旧作ばかりですが…映画好きの1年の締めくくりとして記録。
++++++++++
10.ファイト・クラブ
【ストーリー】
エリートながらも空虚な日々を送る男性が、ある日出会った派手な出で立ちの男にいざなわれ、異質の世界に足を踏み入れる。そこは男たちが己の拳のみを武器に闘いを繰り広げる、壮絶で危険な空間だった。そのファイト・クラブで、彼は自己を開放していく。
ーーーーーーーーーー
痛快!!!ファイト・クラブという荒々しい発想と抑圧された男たちが自己を開放していく過程には爽快感がありながら、中盤からしっかりサスペンスへ舵切りされていてお見事。
男性性が強く暴力表現もあるので女性にはとっつきにくい作品かと思いきや、カットが美しく、面白い伏線が張りめぐらされているので何度でも見たくなる作品でした。
油断するなかれ、物語はすでに「彼」の登場から始まっている!!!
++++++++++
9.ヘレディタリー 〜継承〜
【ストーリー】
一家の年長者だった老女が亡くなり、残された家族は悲しみを乗り越えようとする。そんな中、家の中で怪奇現象が発生。さらに、故人が溺愛していた13歳の孫娘が異常行動をとり始め、やがて衝撃的な事件が一家を襲う。
ーーーーーーーーーー
これぞホラー・ジェットコースター!
人ならざるものが迫り来るじわじわとしたホラーストーリーながら、中盤から人の怖さがぬるりと入り込んできてめちゃくちゃ胃にきます。
特に、後半2/3経たあたりから突如かかりだすホラーエンジンは必見!!!
++++++++++
8.犬神家の一族
【ストーリー】
旧家の名士・犬神佐兵衛の遺言状が公開されるが、莫大な遺産の相続者は佐兵衛の恩師の孫娘である野々宮珠世と結婚した者と記されていた。佐兵衛の孫にあたる3人の男はそれぞれ珠世を我が物にしようと企むのだが、やがてそれは連続殺人事件へと発展していく。
ーーーーーーーーーー
ストーリーの面白さはもちろん、映像が美しく技巧が凝らされており、目を見張ります。推理シーンや犯行シーンに挟み込まれる細かいカット、おどろおどろしい演出の白黒映像、また差し込まれる音楽も最高。
これが1970年代の日本に生まれていたのかと思うと、日本映画も捨てたもんじゃありません。
++++++++++
7.チイファの手紙
【ストーリー】
姉を亡くした妹チィファは、姉が誘われていた同窓会に顔を出し、その死を伝えようとする。しかしチィファを姉本人と勘違いして、スピーチを頼む元同級生たち。さらに憧れだった初恋の先輩と再会したチィファは、皆の誤解を正せないまま、姉のふりをしてしまう。やがてその初恋の先輩が姉に恋していたことを知ったチィファは、本当のことを明かさないまま、住所を伏せて彼に一方通行の手紙を送り始める。
ーーーーーーーーーー
岩井俊二監督作品「ラストレター」を中国版に再編、制作した、まさに「岩井俊二やりたいことやってるな」作品。同じ作品をそれほど間をおかずに国を変えてつくるって…。
そして、再制作というだけあり岩井俊二の真骨頂を見るのが本作でした。中国版のほうが断然好き。
映像は綺麗だし、作中でまとう空気感がストーリーにしっかりマッチ。中国語の響きすら物語の一部のようで美しく感じられます。
心理描写や物語のテーマなどが日本版よりも明らで、その他なんだかよくわかんないことは空気感でカバー。これこれ…これよ岩井俊二…!!!
++++++++++
6.パレードへようこそ
【ストーリー】
サッチャー政権下の英国で実際にあった実話を映画化したハートウォーミング・ストーリー。不況に苦しむウェールズの炭坑労働者たちと、ひょんなことから彼らの支援に立ち上がったロンドンの同性愛者グループが、偏見や衝突を乗り越え、固い絆で結ばれていくさまを描く。
ーーーーーーーーーー
素晴らしい実話をさも感動的に描きだす映画は数あれど、本作はその創作的な誇張表現がまったく鼻につきません。登場人物たちが生き生きとしていて、しっかり壁にぶつかって、やっぱり上手くいかないこともある。その事実を捻じ曲げず、音楽や俳優の表情で彩り豊かに描きだした物語は素敵でした。
信じたことを信ずるままに行動すること。批判されようと無視されようと、動くことにこそ意味がある。自分が動き、まわりが動く。まずは、信じること。
彼らの姿に、勇気と希望をもらう一作です。
++++++++++
5.ガタカ
【ストーリー】
優秀な遺伝子のみを持つ人間によって支配された近未来。自然出産で生まれた「不適正者」の男は、優秀な遺伝子を持つ元エリートのIDを手に入れて宇宙開発会社に入社する。そして夢だった宇宙飛行士に選ばれるが、出発間近に事件が起きる。
ーーーーーーーーーー
物語の筋が一本しっかりと通っていて、どんどん引き込まれます。ストーリーとしてはSFですが、根幹は主人公が不可能に思われた夢を追うお話。壮大な世界観のなかで、主人公の想いの強さだけがいやに泥臭くリアルで、胸が熱くなります。
彼に共感し、画面越しに応援しながらも、一貫してどこか悲しい空気を漂わせるという映画的魅力も。物語としても映画作品としても、オススメの作品です。
++++++++++
4.LIFE!
【ストーリー】
写真誌「LIFE」で地味な写真管理部の仕事に従事する平凡な男。ヒーローになった自分を空想するのが彼の趣味だった。そんなある日、最終号を飾るはずだった写真のネガが行方不明になり、彼はそのありかを聞き出すために写真家の後を追って冒険に出る。
ーーーーーーーーーー
鬱屈して抜け出せない日常を脱する、CGを交えた「想像」シーンが美しい。その美しさがいつしか現実になっていく物語に心動かされます。音楽も魅力的で、oasisとかarcade fireとか、このタイミングでかかってきたらそりゃ泣くでしょ…という感じ。最高。
ベタなストーリーだけれど、共感する。彼のようにありたいと思います。
一生懸命に生きる全ての人へ。
++++++++++
3.影裏
【ストーリー】
岩手県盛岡に転勤してきた30歳の独身男・今野秋一。慣れない土地で心細さを感じていた彼は、同い年の同僚・日浅典博と言葉を交わすようになる。やがて一緒に渓流釣りに行くなど交流を重ね、いつしかすっかり心許すまでの存在に。ところが日浅は何も言わぬままいきなり会社を辞め、姿を消してしまう。日浅と音信不通となり、大きな喪失感を抱えて日々を過ごす今野だったが…。
ーーーーーーーーーー
登場人物の心理を演技やセリフでなく、映像や空気感で伝えます。これぞ映画!という映画。
複雑にからむ心理戦を、東北の風土と主人公・綾野剛のかもしだす雰囲気が完成させています。セリフが極端に少ないながら、ここまで登場人物の心理を緻密に描きだせるのは監督の力量でしょう。満足感の高い重厚な一作です。
++++++++++
2.ミスト
【ストーリー】
のどかな田舎町で妻子と暮らす男性。激しい嵐の翌日、彼は湖の向こう岸に発生した異様に深い霧に懸念を抱きながら息子と共に買い出しに出かける。すると、霧は間もなくスーパーマーケットに迫り、ついには町全体を飲み込むように覆っていく。霧の中に見え隠れする未知の脅威が、店内に残された男性らに次々と襲いかかる。
ーーーーーーーーーー
エンターテイメントの域を超えた映画作品。
最高のアクション、一筋縄ではいかないストーリー、父の愛と子の愛。のめり込むほどに、ラストの絶望感が沁みます。
希望って、そんなに大切ですか???と、作品のテーマにすら難癖をつけたくなるレベルで主人公に感情移入しました。でもきっと、このラストこそ本作には相応しかったのだと思います。わたしは、映画版ミスト支持派です。
もう2度と見たくないけれど、見て良かった一作。
++++++++++
1.この世界の
【ストーリー】
1944年(昭和19年)2月。広島市から海軍の街・呉に嫁いできた18歳のすず。夫・周作とその家族に囲まれ、戸惑いながらも嫁としての仕事を一つひとつ覚えていく。戦況が悪化し、配給物資が次第に減っていく中でも、すずは様々な工夫を凝らして北條家の暮らしを懸命に守っていく。そんなある日、道に迷っていたところを助けられたのがきっかけで、遊女のリンと仲良くなっていくすずだったが…。
世代を超えた熱い支持を集めた「この世界の片隅に」に、約30分に及ぶシーンを追加した完全版。すずと遊郭で働く同年代の女性リンとの交流を中心に、すずの周りに暮らす人々の人生をより深く掘り下げて描き出す。
ーーーーーーーーーー
これぞ完全版…!!!
初作で消化しきれなかった登場人物の心の機微や時代背景が綺麗に描かれており、完全に納得。大満足の130分でした。
戦争によってじわびわと犯されていく「当たり前」と、ともなう絶望感。それまでの常識では暮らせずに様々な葛藤を抱えながら醸成されゆくヒロインの姿が感動的でした。
常識は時代によって変化するということを実感するとともに、新型コロナウイルスによって日常を一変させられたわたしたちにも通じるものがあるでしょう。大袈裟でなく、すべての日本人に見てほしい一作です。
++++++++++
今年はホラー&サスペンス見まくり年でした。怪談ブームの到来とともに、恐る恐る見始めたホラー映画が案外見れて、これまで「一人暮らしだから」という理由で避けてきたホラー&サスペンスの扉を開けたのです。一人暮らしを脱したのではなく、わたしが強くなったためという理由は、嬉しいのか悲しいのか…。ランキングには入れませんでしたが、「残穢」とか「輪廻」とか「ゴーン・ガール」とか良かったです。
そういえば昨年も。
昨年は「もっとメジャーな映画を見なよ」と言われムキになって、映画まとめをつくっていました。年7、80本見る生活を3年ほど続けていれば、そろそろメジャーマイナー関係なく見られている気がします。しかしそれにしても今年は、「犬神家の一族」とか「パルプフィクション」とか「えんとつ町のプペル」とか、新旧関係なく話題作を見ていました。映画を語るうえでよく挙がる作品は抑えておきたい。2022年も映画を見るぞ!