ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

こどもとおとな

母方の実家に、新年のご挨拶に行きました。車で3時間ほどかかる距離にあるのと、母と祖母(母と”母の”母)の折り合いがあまりよろしくないために、祖母や親戚と顔を合わせるのは年に数回ほど。まあ、実家に帰るのも年に数えるくらいですから、このくらいがちょうど良いのでしょう。

 

久しぶりの祖母宅には、母の妹2人とその旦那さん、息子たちもいました。こうして集まるのも盆や正月くらいのものですから、血の繋がりがあるとはいえ、居心地が悪いような、どこかむず痒いような気持ちがして、大人しく隅の方に座っていました。

祖母や母の妹(わたしにとっての叔母)が、仕事はどうとか、暮らしはどうとか聞いてくれます。わたしはテンポ良く、ときおり冗談まじりに会話をして、ふうと息をつくタイミングでお茶を口に運び唇を湿らせます。わたしからも何か質問をしようと思うけれど、昨年ケガをした叔母に「仕事はどう」と聞いて良いものか、半年ぶりに会う祖母に「最近どう?」という質問は乱暴すぎやしないか、そもそもどんな質問をすれば場が盛り上がるのか、ちっとも見当がつきませんでした。そのうちに、叔母がお土産に買ってきた福袋を開封して、入っていたものを掛けたトランプ大会が始まって、妹と、保育士をしている叔母が一生懸命ゲームに挑む姿がおかしくて、笑っているうちに「じゃあそろそろ…」ということになりました。

 

帰りの車のなか。妹が「楽しかったねえ」と満足そうに息をはきます。わたしが「ゲーム、叔母さんと2人で盛り上げてくれたおかげだよ」と言うと、妹はきょとんとこちらを見ました。

「盛り上げてたつもりはなかったんだけど」

「え、じゃあ純粋に楽しんでいたの」

「うん」

こともなげに言って、窓の向こう、まっすぐ続く田舎道を見ながら、妹は言いました。

「お姉ちゃんは、大人になったんだねえ」

小さな頃からわたしたちの成長を見守ってきた祖母、伯父、叔母らですが、その年齢が逆転することは到底ありません。でも、わたしはもう、祖父母にカードゲームをせがんだり、一緒に遊ぼうと叔母の手を引いたあの頃から、10年以上が経過しているのです。わたしは大人の一員として、あの場に座っているつもりでした。

「あの人たちにとって、わたしたちはいつまでも子どもなんだから、変な気をつかう必要はないんだよ」

そう言う妹の横顔こそ、ずいぶん大人びて見えました。