ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

冷凍保存したい年齢

「最高の年齢だな。冷凍保存したい」

夏の日差しが漏れる木陰で、登場人物が言いました。青々とした陽が浮かび上がらせる彼らの顔は、たしかに、若さと希望に満ち溢れています。

 

「冷凍保存したい年齢」があったでしょうか。

中学時代は、友だちと笑っているだけで楽しくて、わたしたちの未来は明るいと信じて疑いませんでした。何もかもが上手くいくだろうという、根拠のない予感がありました。

大学時代は、自由でした。仲間と雑魚寝して、終電までバイトして、週末は見知らぬ土地に一人旅をして。どこでも行ける、なんでもできる。本当にそう思っていたし、本当に、そうしていたように思います。

社会人になっても、その思考は変わりませんでした。むしろ、車を手に入れて、気の合う仲間を自分で見つけるようになって、想いは加速する一方でした。

 

小学校時代は男勝りでプライドが高かったし、高校時代は思うように自分が出せず教室の隅っこで息を殺していたので、この時代を冷凍保存されるとほとほと弱いけれど。でも、わたしにも、冷凍保存して後世に残したい時代があります。

 

冷凍保存してどうするのでしょう。年月を経たときに解凍してリスタートさせるのでしょうか。それとも、観賞用に未来永劫眺めるのでしょうか。なんだか、そうしてしまうのならいっそ、冷凍保存したい一瞬は一瞬のままに、刹那的であるからこそ輝くその時を大切に、日々更新していく方がよほど美しいと思いました。

 

 

ちなみに、このセリフが登場した映画はこちら。

爽やか青春サスペンスかと思いきや、しっかり鬱サイコホラーだったのでおすすめです。