ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

新しい家には、大きな窓があります。居間に設けられた、床から天井までの窓。そこからサンルームにつながるため明かりとりとしてはイマイチで、曇りの日なんかは照明をつけて生活しています。窓を背にソファが配置され、日中、作業するときはそこへ座ります。外を見るのは出かけるときくらい。家にいる時間が格段に増え、情報収集はネットとYouTube。必要なものは玄関の前に停めた車で買いに行くので、ドアtoドア。だから、気づきませんでした。

 

オンライン講習会に参加しました。午前中から始まる講習会だったけれど、なんせ我が家は日当たりが悪い。窓を向いて、顔になるべく明かりがあたるよう座ります。すると、大きくとられた窓と、その向こうに広がる庭、お隣の外壁が見えました。

8時間に及ぶ講習会は集中力がもたず、ぼんやりと視線をさまよわせると、窓の外に人影が動くのを見ました。お隣さんです。そういえば、お隣は家の奥に物置小屋があって、そちらへ行ったようでした。窓の外にも、暮らしがありました。家にいる時間が長く、一軒家が立ち並ぶ田舎の住宅街は静かなので、気づきませんでした。

 

手入れされていない庭のあちこちで、クロッカスが顔を出していたこと。

スイセンの蕾がふくらんで、今にも咲きそうなこと。

お隣さんが薄手の上着にスウェット、エプロンで外へ出ていたこと。

花とも野菜ともつかない植物の芽が、にょきにょき顔を出していたこと。

 

気づきませんでした。

春はもうやってきていて、わたしはすでに、そのなかで暮らしているのでした。