ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

ふきの煮物、あまいかしょっぱいか

はじめてつくったフキの煮物が、しょっぱかった。

味見をしながら調味料を加えていたはずだし、味に納得したつもりで火を止めたけれど、冷まして器にあけてみると、しょっぱい気がしました。改めて見ると醤油の色が濃いし、味醂がてらっとしています。どうしてこうなってしまったのでしょう。

 

お手本は、母が毎年つくってくれたフキの煮物。

母は、地域密着の花屋みたいな野菜屋みたいなところで働いています。おじいちゃんやおばあちゃんが、お客さんのような散歩の休憩場所のような感覚で訪れては故意にしてくださるそうで、たまにお菓子やら惣菜やらをもらってきます。時期がくると、山で採ってきたフキをいただくこともあるのです。すると母は、面倒そうにしながらも丁寧に茹で、丁寧にスジをとり、丁寧に切りそろえて、丁寧に煮物にするのでした。

うっすら緑色がのこって、繊維が均等に煮えてシャキシャキして、ほんのり春らしい苦味が残るフキの煮物。わたしはそのなかで、たまに潜んでいるクタクタに煮えて味がしみしみになったフキばかりを選んで食べました。だから自分で作るフキの煮物は、全部そのフキにしてやろうと思いました。しっかり調味料をいれて、しっかり煮込んで、黒っぽいフキの煮物。自分好みのはずなのに、どこか失敗したフキの煮物。

 

あまくてしょっぱくて美味しいけれど、それは、春の味ではありません。山菜らしい苦味が調味料に埋もれてしまって、もはやフキでなくとも別の野菜で良い煮物です。母の味付けは、そのことをよく理解していたのでした。

クタクタしみしみのフキは、たまにあるから良い。

淡い緑色を楽しみながら、春らしい苦味の残る、母のフキの煮物が恋しくなりました。