ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

好きなひととわたし

「え、お姉ちゃん、それ、彼氏?」

妹が、わたしのホーム画面を見て低い声で一言。毎日目にして日常に溶けこんだホーム画面は、妹に言われてもなお、何のことやらピンときませんでした。え、わたし、彼氏なんていたっけ?

 

改めて見ると、ずいぶん前に好きなタレントさんと撮ったツーショット。たしかに、ルックスを売りにされている方ではないし頻繁にテレビ出演されるわけでもないので、ひと目では、一般男性との1枚に見えるでしょう。夜の暗がりで画質は粗く、マスクを取ることも忘れて満面の笑みのわたし。最高の1枚とは言い難いけれど、それはそれは大切に、ホーム画面に設定していました。

 

その日わたしは、彼の出演する地方イベントに行きました。チケットの販売が現地窓口のみで、当日券を期待して行ったらまさかの時間勘違い、開場時間10分すぎについたときには門前払いでした。片道2時間かけて行ったのに。諦めきれず駐車場で放心していたら、彼が、裏口から休憩に出てきたのです。思わずお声がけすると快く応えて、あまつさえ写真を撮ってくださったのでした。それをわたしは奇跡のように喜んで、幸運の象徴のようにホーム画面に設定していました。

 

春一番に咲いた桜のような、たまたま見つけた四葉のクローバーのような、ふと見上げた空に浮かぶ虹のような、そんな幸運を表情にして笑うわたし。その底抜けの笑顔が、なんともアホらしく、不思議と愛おしく、見ているとなんだか、大体のことはどうにかなるような気になりました。

自分の笑顔に元気づけられるなんて、可笑しな話。でも、ホーム画面の好きなひととわたしは、笑っています。

 

今週のお題「ホーム画面」