ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

宝物入れ

並んだ本の背表紙を眺めるのが好きです。

わたしが本を読むようになったのは小学校にあがるまえ。父が漫画好きで、実家の父母の寝室にある本棚には、古い漫画の背表紙がズラリと並んでいました。往年のギャグ漫画とか、1巻完結の短巻漫画は父の実家であるおばあちゃんの家に残されていたので、実家のその本棚に収められているのは、父が集めた漫画のなかでもひときわお気に入りの作品ということでしょう。本棚の扉はガラスがはまってちょっと重たくて、1番上の棚はわたしの背では到底届きませんでした。まるで、父の宝物入れのようでした。

 

父の宝物入れが羨ましくて、わたしもねだりました。わたしの部屋の、わたしの本棚。もちろん本が付属されているなんてことはありませんから、スカスカの本棚です。父にならって漫画やら本やらを買ってみますが、なんだかそれらを読む感動より、すっかり読み終わって本棚に収めて、並ぶ背表紙を眺める高揚感のほうが大きい気がしました。表紙が可愛い少女漫画や、装丁が美しい小説を買いました。作者も巻数もバラバラのそれらは、本棚の隙間を埋めました。

やがて、本そのものに魅力を持ち集めだしたのが小学校高学年のころ。ハリー・ポッターダレン・シャンシリーズが刊行されて、もちろん全冊、ハードカバーで集めました。ハードカバーは、漫画の2、3倍、隙間を埋めてくれるのでした。

 

大人になって、本を読まなくなりました。それでも今、わたしの家には本棚があります。好きな作家さんの小説と、勉強になると思って買った実用書と、漫画の数々。そのなかには、父の本棚に並んでいた漫画もあります。実家を離れるとき、黙って持ってきました。国民的ラブコメ漫画を全巻。おそらく今、実家の父の本棚は、たいそうな隙間があいていることでしょう。それでもきっと、父のお気に入り作品がまた、その隙間を埋めていくのです。

 

今週のお題「本棚の中身」