ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

エゴ

ひさしぶりに、映画を見ました。夜10時から見始めて、朝まで。ほんとうは1本だけ見てやめるつもりだったけれど、選んだのが2時間半の超大作胸糞映画。残忍さをエロとグロで塗り固めたみたいなミステリーサスペンスを午前0時30分に見終わって、とてもじゃないけれどこのまま眠れる気がしなくて、もう1本、もう1本と見続けるうちに空が白んできました。

 

朝4時。

3本目はミニシアター系の邦画。本編前に長いCMがあって、お酒をとりにいっている間に新作映画やらDVD情報やらが流れていました。戻ってくると、20代前半と思われる男女の真剣な眼差し。みな同じ方向を向いて、口を真一文字に結び、何をそんなに見ているのかと思えば大仰なカメラのモニター。映画学校のCMでした。

「ここで、映画を作る」

「映画が好きだ」

古いCMらしく、正方形の画面。飾り気のないメッセージだからこそ、彼らの真剣な表情がより印象的に映りました。

 

わたしが映画に心惹かれるようになったのは大学3年生のころ。地方の文系私立大学生だったわたしが、まさか映画業界に進もうなんて思うことはなく、ふつうに就職活動をしてふつうの仕事に就きました(ちょっとふつうとは言いきれないかもしれないけれど)。

 

でも、もしも高校生のころに映画にハマり、そのタイミングで大学進学の決断を迫られていたら、わたしは、このCMのような彼らにまじって映画を作っていたでしょうか。

わたしが好きなもので、人の心を動かそうなんてエゴだ。

とっさに思って、そんなくだらない過去の「もしも」を振り払いました。

 

振り払いはしましたが、でもわたしは、朝日で白く浮かび上がる狭い部屋で1人きり、4時になるまで映画を見ています。