ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

ラブ

これはラブだな、と思いました。

彼女が「友だち」と紹介した男性。彼女より1つ歳下、わたしと同い年。北海道の左上に暮らす彼女と、札幌に暮らす彼ではそう頻繁に会えないだろうと思いましたが、彼女が札幌に行くたび飲みに行くそうです。

「すっごくいい人!彼1人いればまったく話が尽きないんだよ!ほんと、場をまわすのが上手い!」

彼女は大絶賛。ほうほう、それは興味があります。わたしも、こと飲み会となるとまわし役が多いので、それならちょっと場をまわしてもらって、ついでにその技を盗ませてもらおうと思いました。

 

「ごめん!お待たせ!」

小走りに店にやって来て、息を弾ませながら着席する彼。飲み物を注文して、ひとつふたつ話をしました。

どんな仕事してるの?

このあたりはよく飲みに来るの?

彼女とはどこで知り合ったの?

話をするうちに、はて。わたしが場をまわしているのでは?場まわしの天才は彼であって、きょうわたしは、彼の技を盗みに来たはずでは?はてなマークを浮かべながら話をしているうちに3杯、4杯とお酒が進んで、彼も酔いがまわってきたようです。よく喋るようになりました。でも。

彼女との出会いは?

彼女とはふだん、どんな話をするの?

彼女の好きなものは?

このまえ彼女とこんな話をしたんだけど…

 

いくらわたしでも、気づかないわけがありません。こりゃあ、ラブです。彼は、彼女が好きなのです。だから、彼女にとって彼の印象は「よく話をしてくれる、面白い人」。でもそれは、彼が彼女の前でそう見られたいがために作り出した彼であって、今、素の状態でわたしの前に座る彼は、その姿をしていません。

 

なーんだ。

わたしは肩を落として、彼が話す「彼女の話」を、お酒と一緒に飲み干しました。