雪が降った日
「雪じゃん…」
北海道の左上も、冬本番です。
ちらついては溶けていた雪が、道路をまっしろに染めました。こうなるとなかなか溶けないでしょう。長く厳しい冬の始まりです。
日がな一日、ごうごうびゅうびゅうと風の音がして、でも雪の降りはじめは、すこし気温が高めです。油断して部屋着にジャケット1枚でゴミ出しにでても、身体の芯まで冷やされることはありません。ただ手袋もつけない肌色の部分が冷たい風にさらされて、あっという間に赤く痺れました。
「シーズン最初の雪道は緊張する」
誰かが、車のフロントガラス越しに撮影した坂道の写真をSNSにあげていました。たしかにわたしも速度をグッと落として、停車するかなり手前からブレーキを踏むようにします。そして交差点やら坂を下りきったところの「とまれ」看板やらを見て、そうだこの道は滑りやすいんだったと半年前までの感覚を思い出すのです。
「ついにこの季節が来ましたよ」
自宅に工事の業者さんが来ました。チャイムがなって玄関扉を開けると、彼の肩越しに地面と平行になって降る雪が見えます。
「お天気大変でしたね」
わたしが言うと、彼はあからさまに肩を落としました。その気持ちは、ここに暮らす誰もがおなじです。
道ゆく人がアウトドア用の色鮮やかなアウターを着て、チャックを首元までしっかり上げフードを目深にかぶりうつむきながら歩いています。このまちで冬のおしゃれなんてあってないようなもの。オフホワイトのコートよりレザーのブーツより、アウトドアメーカーが販売する防寒に長けたアウターが脚光を浴びるのです。
北海道の左上も、冬本番です。