ひさしぶりに泣いた
大人になると涙腺も成長するのだろうか。
最近、ちょっとやそっとじゃ泣かなくなりました。嬉しかったり悲しかったり、心揺さぶられると流れる涙ですが、心の動揺に強くなったということでしょうか。
そんな折、ひさしぶりにおじいちゃんと電話をしました。おじいちゃん、おばあちゃんがお米や食べ物を送ってくれた、お礼の電話でした。
歳のせいで、すっかり遠くなった耳。電話越しに話しかけてくれるのだけれど、わたしからの声は届きません。
「切れた」
と不満気におばあちゃんへ受話器を渡すと「切れてないわよ」と返されてしまいます。わたしも受話器に口を寄せて声を張り上げるけれど、聞こえている様子はありませんでした。
すると、おじいちゃんは話しはじめました。
「元気にしてるかい、蜜柑と柿をもらったから入れたよ、頑張ってね」
なんてことはない言葉だけれど、おじいちゃんは、相槌のひとつもかえってこない受話器に向かって、わたしの姿を浮かべながら話しかけているのだと思ったら涙が滲みました。
結局、わたしの声は届くことなく電話は切れてしまいました。
幼い頃、まんまるのお腹をさらにまんまるに膨らませてポンポコやってくれたおじいちゃん。わたしを「心の友」と呼んでくれたのがすごく嬉しくて、ずっと覚えています。いまでは病気をして、まんまるだったお腹もぺったんこ。大好きなおじいちゃんがこのまましぼんで消えてしまうのではと、わたしはなかなか本気で心配しています。
おじいちゃんの気持ちは、十二分にわたしへ届いたけれど、わたしの気持ちは届けられていません。
会いに行かなきゃ。
言葉が届かなくても、目を見て、手を握って、笑いかければそれで十分。わたしたちは「心の友」だからね。