ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

おもいで

冷やされた部屋

今週のお題「冷やし◯◯」 実家の居間にはエアコンがついています。わたしが中学に上がるころに建てた家ですから、もう15年ほど前のこと。当時北海道の物件にエアコンは珍しく、新築の家に取り付けられたエアコンを見て「我が家も上流階級の仲間入りか」と誇ら…

きらいな給食

わたしは、給食が好きではありませんでした。給食といえば、子どもたち誰しもが、その時間を心待ちにしているイメージですが、わたしは思ったことがありません。 小学生が両腕を広げてようやく持ち上げられる平たい銀の容器に詰められたごはんは、右のほうが…

タンポポと母の悲鳴

北海道の左上では、ようやく花々が太陽に向かって花弁を広げています。スイセン、チューリップ、ナノハナ、そしてタンポポ。この春に引っ越してきた、古い一軒家の広い庭にも、タンポポがあちらこちらで咲いています。もちろん植えた覚えなどありませんから…

魚の骨

「そんなことあったっけ?」 母は笑って言うけれど、わたしにとってその出来事は、あまりに衝撃的でした。 幼少期、たぶん、6、7歳のころ。母、妹と3人で食卓を囲んでいました。夕飯のメニューは、白米に味噌汁、青菜と卵を炒めたものと、紅鮭。母はいつも、…

バレンタイン

ついさきほど、記憶の奥底にしまったバレンタインを思い出しました。 小学校4年生のとき。ちょうど週中の2月14日で、前日は大変でした。母を巻き込んでの手作りバレンタイン。深夜に及ぶお菓子作り、台所はしっちゃかめっちゃか、ラッピングは当日、家を出る…

プロモーションの失敗

「”どれみちゃん”に会いたかったのに」 映画を観ると、必ず評点してレビューを書きます。映画を観るようになって、そこにお酒がつくと、過去に見た映画を再び見てしまうことがあり、それを防止するのです。映画鑑賞アプリを、自分のレビューはもちろん他の人…

人生ゲーム

実家には、人生ゲームがあります。 ボードゲームのそれは、小学4年生のころにもらったクリスマスプレゼントでした。当時、友だちの家でテレビゲームをさせてもらっていて、ゲームキューブの人生ゲームソフトが大変面白く、わたしも欲しいと思いました。しか…

E.T.ごっこ

「てぃーりーてれれれれーれー」 幼いころ、父は不思議な鼻歌を歌いながら、人差し指をわたしに向けました。わたしも人差し指をのばして、その先にゆっくり近づけます。曲が最も盛り上がるタイミングで指先をぴったり合わせると、完成。これが、父とわたしの…

派閥

わたしは、TSUTAYA派でした。大学生のころ映画にハマり、DVDを借りにいつも決まって行ったのは大通りのTSUTAYAさん。広い店内に、この世のすべての映画を集めたというような数のDVDが所狭しと並べられていました。就職のために引っ越した田舎町にもTSUTAYAと…

思い出の

朝の狸小路は、思った以上に眩しかったのを覚えています。 かつての札幌国際短編映画祭は、ノミネート作品のオールナイト上映が行われていました。シネコンが主流となった昨今、オールナイト上映はいち映画ファンとして憧れで、「短編映画祭」というよりも「…

もう戻らない、もう戻れない

もう戻らないのだと思うと、胸の奥をぎゅうと強く掴まれる心地がします。 夏休み、ひとりきりで実家の自室に寝転がる昼下がり。父と母は仕事、妹はどこでなにをしているのでしょう、物音ひとつしません。ただ、窓の外からは夏の陽光が少し傾きながら入り込ん…

そういう気分

大学時代、妹と2人暮らしをしていました。 規則正しく学校に通う妹と、卒論の用事しかなくなり居酒屋バイトに通うわたし。生活リズムが異なり、妹が家を出る時間にわたしが起き出し、わたしが帰宅する時間に妹が居間のソファでうたた寝をしていました。 わた…

たこやき

綺麗な斜線を描いたソース。湯気が、食欲を刺激する香りを運んで、鰹節を踊らせます。別添えのマヨネーズは少々かため。箸ですくって塗りひろげながら、ひとつを口に運びました。 カリッ 歯を当てると、心地良い音で生地がやぶれます。ふんわり、とろとろ溢…

鉄火丼

わたしは、じょうぶな子どもでした。入院するような怪我をしたことはないし、風邪もめったにひきません。ただ、1年で必ず体調を崩す時期があって、それさえ用心していれば健康なのでした。けれど、どだい無理な話。その時期は12月から2月にかけて、クリスマ…

赤の振袖

「どれでも好きなの選びなさい」 わたしの母は、三姉妹の長女です。中肉中背、田舎のお嬢ちゃんという風の母、そして、背が高くショートカットがよく似合う次女、パーマをあてたふわふわのロングヘアが可愛らしい三女の、三姉妹。彼女らは、それぞれに振袖を…

重要な役目

どん まだ幼いとき、クリスマスの夜は家族でパーティーをしました。当時、父は仕事が忙しく、わたしたち姉妹が眠る準備をすっかり済ませたころに帰宅していました。でも、クリスマスの夜は、できる限り急いで仕事を切り上げていたのでしょう。いつの思い出に…

泣いている娘

父は、デリカシーがありません。 太った痩せたをこちらの事情お構いなしに批評するし、娘のプライベートを他人にぺらぺら喋ります。そもそも、わたしが彼を「デリカシーがない」と判断したのは、5歳のときでした。 父は、わたしの友だちを含め子ども3人を映…

重たい布団

寝具に対するこだわりは、多かれ少なかれ、各々にあるでしょう。枕の硬さ、高さ、カバーの質感、シーツの肌触り、布団の厚さ、枚数、毛布の有無。なかでもわたしが最も気になるのは、布団の重さ。 まだ小学校にあがったばかりの小さいころ。 母方の祖父母の…

成り立ち

むかし、写生大会に参加しました。妹は絵を描くのが好きだったので、週末、母が写生大会に連れて行きました。わたしも一緒に行きました。母は、少し意外そうでした。当時わたしは、絵を描くのが嫌いだったのです。しょっちゅう漫画をよんでいたから頭の中に…

水たまりを蹴散らして

ひさしぶりに自転車に乗りました。 車を点検に出してしまったので、その代車です。毎日出社していた格好は自転車に不向きで、ロングスカートのスリットから素足がでて、髪は風に煽られ視界を阻み、道にできた水たまりを避けるのもひと苦労です。気を抜いた瞬…

どぼん、

わたしは今年、25歳。 でも、いまだに父から「ほら、よそ見してるとこぼすぞ」とか、「すぐこけるんだから」とか言われます。おそらく、父にとってわたしは、いつまでたってもわずか3歳の女の子なのでしょう。 「あんまり近づくなよ!落ちるぞ!」 も、そう…

あい

小学校の国語、漢字の授業では「これは”友達”の友、”友介くん”の友だね」「これは”お花”の花、”綾花ちゃん”の花だね」なんてふうに、クラスメイトの名前とあわせて教わりました。 教室には、習字や図工作品や個人目標が貼りだされていて、そこに「さとう友す…

おにぎりの遺伝子

三角形ににぎられたものが「おむすび」、形を問わないのが「おにぎり」だそうです。それならわたしは「おにぎり」が好き。 母がつくるおにぎりは、友だちのお弁当にはいっているどんなものとも違いました。三角形でもまんまるでも俵型でもなくて、手のひらサ…

勉強するときにオススメの曲を

「勉強するときにオススメの曲を教えてください」 小学生の友人は、この4月から中学生になりました。新入生お迎えテストが近いので、目下お勉強中だそう。外出自粛も相まって週末は机に向かうという彼女に、勉強時オススメの曲…ふむ。 この4月から社会人4年…

わたしと父と映画館

思い出があります。 鮮やかな赤の椅子。座面を倒して座る仕様が物珍しくて、でも声をあげるのは子供っぽい気がして、何食わぬ顔で腰かけました。深く座ると届かない足をブラブラさせながら、ポップコーンをほおばるうちに「ビー」と快とも不快とも言えない音…

小学生のわたしよ

あいかわらずレンタルビデオ店に通っています。そのときの気分で2本とか3本とか5本とか6本とか選んで、レジに持っていって、わたしも言われ慣れていれば店員さんも言い飽きているだろう月額プランをお勧めされて、自動ドアへ。その途中に、レンタル落ちの映…

おうちケーキバイキング

「お姉ちゃん…またケーキつくったの…」 学校から帰るなり、冷蔵庫を開けて開口一番。玄関扉をくぐった時から甘い香りがしたのでしょう。 3歳年下、体型の気になるオトシゴロな妹は、群青のプリーツスカートを翻して食器棚に手をかけました。 (でも食べるん…

人間っていいな。

お正月は実家に帰りました。 身内で最年少の従弟が今年、大学院に進んで資格を得たいらしいと祖母の話。そういえば、身内中で資格職でないのはわたしだけだなとぼんやり思い、それを実家で話したら「1番良い学校に行って1番学費がかかったのに1番よくわか…

BGMのある思い出(行き道)

7時43分発の普通列車に乗るために、7時10分に家を出ていました。朝陽を浴びながら歩くはずの道のりは日差しが鈍くて、さすがは「霧の街」の異名をとる地元だと、少し笑ってしまいます。冬はなおさらで、雪が降ったり止んだりする道をセーラー服にダッフルコ…

BGMのある思い出(帰り道)

バスの揺れは電車に比べて不規則で、エンジンによる微かな振動とカーブにおける緩やかな遠心力が眠気を誘います。大人になって車を買って地元を離れて、路線バスとは無縁になった今も、高校の帰り道に揺られたバスの記憶があります。隣町への電車通学でした…