ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

2021-01-01から1年間の記事一覧

オススメ映画2021

2021年に見た100本弱の映画のなかから、広くオススメしたいベスト10をご紹介します。「わたしが見た100本」なので旧作ばかりですが…映画好きの1年の締めくくりとして記録。 ++++++++++ 10.ファイト・クラブ www.youtube.com 【ストーリー】 エリ…

推し怪談師

会社は年度末が忙しさのピークで、2月や3月はみな思い詰めた顔でパソコンに向かいます。わたしも例に漏れず、あらゆる資料で机上を散らかしながら、左耳には先輩・上司のひとりごと、右耳にはイヤホン。それは、社内に響く狂おしいキーボード音を遮りたいた…

甘やかな年の瀬

「もう年の瀬だしあとは来年、と惰性的になるこの時期が嫌いじゃない」 どこかの誰かが言っていました。2021年も残すところ4日。クリスマスという一大イベントを終えて、仕事納めされる方もいて、これは、紛うことなき年の瀬。でもわたしはどこかまだ2021年…

ご褒美

年末、ボーナスが入ると自分へのご褒美として少し値のはるものを買うことにしています。昨年はちょっと良い時計。一昨年はパソコン。でも、今年はありません。なぜなら、年の半ばに車を買ってしまったから。父から残債とともに譲り受けたそれは、とてもじゃ…

人生ゲーム

実家には、人生ゲームがあります。 ボードゲームのそれは、小学4年生のころにもらったクリスマスプレゼントでした。当時、友だちの家でテレビゲームをさせてもらっていて、ゲームキューブの人生ゲームソフトが大変面白く、わたしも欲しいと思いました。しか…

朝5時

「買いに行って力尽きたん?」 見ると、大きなクッションに覆い被さるようにして寝落ちする、大きな身体。右手には乳飲料が握られていて、面白いのでそのままにしておきます。 「クリスマス忘年雪遊び会するぞ!」と意気込んで集まったのは、15時過ぎたころ…

口内炎

「あいちゃん、ランチ、カレーにしない?」 「ごめんなさい、きょうはちょっと…」 先輩からのお誘い。泣く泣くお断り。なぜなら、きょうのわたしは下歯茎に左右ひとつずつ、口内炎をこさえているのです。 口内炎ができるなんて、いつぶりでしょう。しょっち…

腹の皮がつっぱるような

「むっちゃ飲も」 彼女がそういうので、わたしも迷わず 「むっちゃ飲む」 今日は火曜日。スタートは21時過ぎだし、明日は仕事だし、むっちゃ飲むためのコンディションが100%整っているかと言われればそうではないけれど、でも、飲むと決めたら飲むのです。そ…

冬越し

雪が降ったり溶けたりしています。雪国北海道は広く、積雪量も降雪日も地域によって異なります。わたしが生まれた道南で降る雪なんて微々たるものだったと気付くのは、大学に進学して道央札幌へ引っ越した初めての冬でした。北海道随一の繁華街すすきので飲…

クリスマスソング

クリスマスソングを好きな人間がいるなんて、思いませんでした。 この時期、街を賑わせるクリスマスソング。街頭有線もショップBGMもテレビもラジオも、シャンシャンシャンシャン、リンリンリンリン。楽しさしかないと誇示するような、幸福そのものみたいな…

最悪の日より、幸せの次の日のほうが

朝。まだみんなが起きだす前に、細い道を選んで歩きます。キンと冷えた冬の朝に出歩く人影はなくて、細い道に車通りはありません。ただ、わたしのブーツの靴音だけが快活に響いていました。太陽の上がりきっていない路地裏はどこか青っぽくぼんやりとして、…

クマとじいちゃん

その年最初の雪の朝、街で1番高い展望台の池を、クマがぐるりとまわっていく。冬支度なのか散歩なのか、きんと冷たい冬の朝、まだやわらかい雪に、クマの足跡が残っている。 じいちゃんが教えてくれました。 「雪が降った、雪が降った」 事務所にやってくる…

先輩の、ちょっといいこと

「また殺し屋みたいな顔してますよ」 職場の先輩は、顔が怖い。それは、眉が太く目が大きい男性なので目元の印象が強くて、自他ともに認める事実でありました。仕事が立て込んでくると、眉間に皺が寄って目がぎゅっと釣り上がり、口はぐっとへの字に曲がるの…

夜の準備

北海道の冬に、さっぱりと青空なんてことは稀です。いつも空一面雲に覆われていて、それが薄いか厚いかのちがい。薄ければ太陽が透けて差しますから、割合あかるく、雪が反射して視界が白っぽくキラキラします。しかし厚い雲がかかると、日光が遮断され黄み…

北海道の左上

「カラオケ行くぞ!」 時刻は22時30分。「作業会」と称したわたしたちの集中力は、2時間半を経過したところで完全に切れてしまいました。わたしたちが暮らす北海道の左上には、仕事終わりに勉強や仕事や読書ができる手頃なカフェやスペースがありません。そ…

「休む」をする

最近、「休む」をするようにしています。実は、今年春からほぼ休みなく動きつづけていて、それは将来の夢のためだったのだけれど、蹴躓き、どうにも上手く起き上がれず、ずるずると地を這うような生活が半月ほど続いたので、こりゃいかんと思い「休む」こと…

E.T.ごっこ

「てぃーりーてれれれれーれー」 幼いころ、父は不思議な鼻歌を歌いながら、人差し指をわたしに向けました。わたしも人差し指をのばして、その先にゆっくり近づけます。曲が最も盛り上がるタイミングで指先をぴったり合わせると、完成。これが、父とわたしの…

わたしたちの友情は

「ひさしぶり〜」 なんとか仕事を終わらせて、急いで帰宅しオンラインミーティングサービスに接続すると、半年ぶりの顔ぶれ。いえ、まなの結婚式以来一同に会すことはなかったから、1年ぶりでしょうか。4人みんな、すでに画面に向かってひととおり近況報告を…

恋から愛になった

「いいんですか?」で出会ったRADWIMPS。中学生のときでした。テレビで放送されるようなメジャーソングしか聞いたことのなかったわたしには、衝撃でした。「あなたといる意味を探したら、明日を生きる答えになったよ」とか、「2秒前までの自殺志願者を君は永…

迷路、これ人生なり

「迷っていきますか?」 先輩が言います。言われた方は「はあ、」と訳がわからない顔をしていて、それにわたしは笑いました。 子ども向けイベントの仕事でした。わたしの担当は、段ボール迷路。前日に大人5人でひいひい言いながら設置しました。特に先輩がよ…

よくわからない飲み会

よくわからない飲み会があるでしょう。 なんでこのメンバーで集まっているんだろう、とか、何を話してもイマイチはまらない、みたいな、ただ目の前のお酒を流し込むしかない飲み会。毒にも薬にもならない飲み会。わたしはお酒が好きなので、よくわからない飲…

わたしの暮らしは

一人暮らしを始めたのは、今から9年前。大学進学とともに初めての一人暮らしで、母からは大変心配されました。なにせわたしは、実家に暮らしていたころ料理も洗濯も母に任せきりだったのです。母が仕事に行ってしまった土日の昼ごはんなんかは、残り物を冷蔵…

夜の一員

実家に帰ったとき、妹とスーパーに行きました。 彼女の仕事終わりを待って出かけたカラオケ。満足して帰るころには日付をまたいで、わたしは安いお酒で程よく酔っぱらっていました。ハンドルを握る妹に「お酒を買って帰ろう、スーパーに寄ろう」とせがみ、彼…

実家

わたしは、北海道の左上に暮らしています。就職を機にIターンして早5年ですが、出身は道南の観光街。すると、友だちやら親戚やらに会って必ず言われます。 「いつそこを出るの?」 なんと失礼な話だろうと思いながらも、でもやっぱり、へらへら笑って「いつ…

慈悲深い人間

「あたしにはね、幸せの限界があるの」 大好きな映画の登場人物が、泣いた後のような喉にかかる声で言ったのを覚えています。朝方の青白い光が差し込むベッドルーム、毒虫や毒魚が見守る水槽に囲まれて、彼女は細い腕を持ち上げました。幸せに溢れるこの世界…

朝7時

「あいちゃん!朝だよ!7時だよ!」 友だちの家で飲んで、迎えた朝。6時に起きると宣言してアラームセットしたくせに、彼女の声に目を覚ますと1時間の寝坊でした。彼女の家のソファは、ずいぶん寝心地が良かったようです。それとも、「いい加減に寝よう」と…

わたしの孤独に寄り添うのは

深夜。 仕事から帰るなり倒れ込むように眠ってしまったせいで、こんな時間に目が覚めました。窓の外はうっそりと暗く静かで、同じアパートの住人も皆寝ているようでした。そのまま朝を迎えても良かったのですが、なんだか胸の隅がすかすかして、スマホを手に…

強くなったり弱くなったりしながら

はじめてその歌に出会ったとき、夏の夜にふく風のようだと思いました。蒸し暑く肌にまとわりつく夜の気配、どこかからふく風は細く弱いけれど、それでも、動きにあわせて襟足を引くような不快感を連れ去るには十分でした。そんな夏の夜を思い出して、風が頬…

ホームラン

誰だってきっと輝いてる スポットライトだらけになってる それは今でも変わらないのに バンドが歌っていました。 過去には武道館ライブを成功させましたが解散、のちにバンド名を変えて再結成したバンド。彼らの名声は、解散する前のバンド名でしか通ってい…

感情の話

「適材適所ですから、今のお仕事を大切にされた方がよろしいですよ」 これは、わたしの感情の話だけれど。 一緒に仕事したこともない、1度お酒を飲んで1度会議の席をご一緒しただけのあなたが、わたしの適材をご存知なんですか?たかだか5年働いたという情報…