ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

左肩をぐるり

素敵なカフェで、左肩をぐるり。

隣の席ではおばさま方が、おしゃべりに花を咲かせています。

 

「その服いいわね。ストンとして、丈も調度良い」

「ありがとう、これ、着ていて楽なの」

「着て気持ち良いのはいいわね」

 

おばさまの話題は代わりやすくて、すぐに、田舎では服を買うところがない話から最近のチェーン衣料販店は安くて仕立てが良い話へ。

わたしはもう1度、左肩をぐるり。

 

肩こりの癖はありませんが、受験勉強していたときと卒論を書いていたときには痛みをやわらげる錠剤を飲んでいました。日常で常に感じるわけではないので、肩こりをすると思い当たる原因があります。その日は、着ていた毛糸のカーディガンがいけませんでした。

 

太めの毛糸でざっくりと編まれた淡いホワイトのオフショルカーディガン。憧れのブランドの店頭マネキンでひとめぼれして、3回行って過ぎてを繰り返し結局購入したカーディガン。ちょっと背伸びをしたそのブランドはセールの日でもないと手が伸びなくて、1着でも購入した日にはアイスグリーンの美しい紙袋にいれてもらうのでした。

お気に入りのそれの欠点は、太めの毛糸でゆったり編まれているために、重たいこと。オフショルのシルエットもいけないのでしょう。可愛いかわりに重たくて、特にご機嫌の日にしか身につけないとっておきの一着でした。

 

「着て気持ち良いのがいいわね」

 

おばさま方に言わせれば、このカーディガンは箸にも棒にも掛からぬ一着でしょう。毛糸なのでクリーニングに出さないといけないし、淡いホワイトは汚れを気にしなければならないし、重たいので肩こりするし、おまけにわたしはなで肩なので、オフショルスタイルはずるずる滑ります。

でも、わたしにとってこのカーディガンは「着て気持ちが良い」一着です。

そんなことを考えながら、素敵なカフェでコーヒーを一口。

左肩をぐるり。