ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

これが正解

胸を張って歩く。
友だちと旅行に来て、途中別行動。
一大観光地で、しかも季節は冬で、イルミネーションとカップルとファミリーの華やかで軽やかな光景が眩しく、マフラーの口元を少し引き上げました。1人でどこへでも行くほうですが、賑わう観光地を1人歩くことに何も感じないわけではありません。観光地の往来を突き進む女…うーん。
でも、胸を張って歩く。お互いの歩調にあわせて緩く進む人波を、シャンとして堂々行くだけで、随分世界が明るくなります。

物事、なんでもそう。
これが正解、という顔をして胸を張るだけで、正解。

少なくとも3度は訪れている一大観光地。お気に入りのお店や見覚えある道もあって、わざわざ観光という気持ちも起きずあちらのお店こちらのお店とフラフラ。すると、3度来て3度とも目の前を通り、3度気になったカフェに差しかかりました。
古い家屋を改装したカフェは、その土地らしい和洋折衷のつくりで「ハイカラ」というワードがぴったりでした。二枚戸になって深い木目色をした扉は、庇が深く張られたガラスも鏡のようにわたしをうつすだけ。
どうにも、その軽いはずの引戸に手がのびなかったのです。

一度は通りすぎてあちらのお店へ。そして戻って、深呼吸して、ゆっくり扉を滑らせました。

軽いと思った戸は、築年数のためかスルリと滑らず、コトコトと開いて慎重に間をあわせました。窓に沿って長くなった間取りに、こちらに背を向けるようにして1人座る女性が2組。席に通され、小さな器に控えめに注がれた昆布茶が湯気をたてているのを目にして、ガッツポーズ。いままで、なぜ3度も素通りしていたのでしょう。

でも、物事なんでもそう。
出会ったときがベストタイミング。
出会うべくして出会うのです。
だから、これが正解。

 

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