ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

いもうと

カフェ。歩行者専用道路に面した窓際。4月初旬の北海道は木々が芽吹くまえで、路肩の花壇も昨シーズンの名残のみと色が乏しく寂しいけれど、道行く人の服装はすでに随分色づいています。スカイブルーやライムグリーンの春コートがひらひらして綺麗。

カップと皿が2セットも並べばいっぱいのテーブルに2つのイスがついた席へ腰かけました。わたしはホットコーヒー、彼女はアイスティー。コーヒーのソーサーにはスプーンとミルクが添えられて、ミルクやレモンをことわったアイスティーにはコースターが付けられていました。わたしが、お砂糖やミルクに手をつけずカップを傾けると、「それ、つかっていい?」と彼女がティースプーンを取りあげ、こちらの返事を待たずに砂糖をくるくる混ぜ溶かします。彼女が生まれてから22年、このくらいの無礼はご愛敬。

 

3つ下の妹とは、普段はなれて暮らしています。盆暮れ正月、お互いに好きなアーティストのライブの時なんかに顔を合わせて、話をします。わたしが大学進学で実家を出るまでは、「顔を合わせりゃ喧嘩するんだから、離れていなさい!」と母に怒られるほど、普通に喧嘩する姉妹でした。わたしが階段の下から、彼女は上から、ガツガツと言葉を投げつけあったあの頃、頭上の彼女と10年後、こうして笑いながらカップを傾けるなんてことを想像だにしませんでした。

 

学生時代の部活動のせいで色の薄まった髪が綺麗。笑うたびに、緩く巻かれた毛先がゆれてやわらかそう。もう少し、シェーディングを濃くいれてもいいかも。そういえば、おでこが広かったんだ。まだ彼女が赤ちゃんだった頃、その広いおでこに目玉焼きのオモチャを乗せて遊んでいたっけ。まだ写真、残ってるかな。

「お姉ちゃん、聞いてる?」

お互い大人になって、こうして過ごす彼女との時間が好きです。