ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

初心者

「なし食べる?」

 

お土産屋さんで働いている友だち。秋のこの時期、隣町の果樹地帯からくだものが入るそうです。

 

「家にまだ前もらったやつがあってさ。あ、ナンバンは?」

 

ナンバンはくだものじゃないじゃん、なんて言いながら彼女が持つふくろを覗きこむと、洋ナシ。わたしが想像していたのは、和ナシでした。

 

北海道の左上に来るまで、洋ナシを食べたことがありませんでした。どこか高級なイメージのあるそれは、せいぜいお菓子なんかの「洋ナシ味」しか知りません。秋、スーパーに並ぶのは和ナシばかりで、「なし」といえば「和ナシ」。しかし、彼女にとって「なし」といえば「洋ナシ」なのです。

 

鮮やかな緑色から黄色にかわる実。つるつるでもふわふわでもなく、するするとした皮に包まれて、芳醇な香りをさせながら舌をつるりとすべります。買ったばかりは熟していない場合があるので、包丁をいれる前によくよく様子を見ましょう。洋ナシは、しっかり熟したものを食べるべきです。緑色だとまだまだ。黄色だともう随分いいですが、包丁をいれると硬くてがっかりすることがあるので、必ず触った感じを大切にします。ゆるりとやわらかい弾力を感じたら、食べごろ。

そう思って、3つもらった洋ナシを冷蔵庫の上にあげて追熟させ、食べごろをうかがっていました。毎朝、1番手前のものを目の前でくるくるまわし、弾力を確かめました。まだだ、まだ少し硬い、もう少しで食べごろ…とやっていたある朝。ベッドからはい出てキッチンへ向かうと、まったりと甘い香りが寝起きの鼻をくすぐります。「まさか」冷蔵庫の上にのせた洋ナシのパックを下ろしてみると、手前のひとつを除いて奥2つが熟しすぎ、汁をしたたらせていました。

わたしは、まだまだ洋ナシ初心者です。