ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

かぼちゃのなか

公園で、かぼちゃを彫りました。

10月なのでジャックオランタン。隣町の農家さんからいただいたかぼちゃです。タネを食べるかぼちゃで、

「ガワなら持っていっていいよ。タネさえかえしてくれればいくらでも」

イベントに展示するために、会場となる公園で、宣伝をかねてタネだし作業。

 

まず、かぼちゃのお尻に円形の穴を開けます。穴の中はぽっかり空洞で、白い糸を引いたワタにくるまれて緑色のタネが気持ちよさそう。手を入れると、指先に繊維質がぶつかり、ぷつぷつと裂け、しっとり手首までくるまれます。それらを容赦なく掻きだして、ワタにしがみつくタネを丁寧にこそげとって、ようやく、ジャックオランタンらしい顔を描けるのです。

 

しばらくやっていると、少し離れたところからじい、とこちらを見つめる男の子に気がつきました。

「やってみる?」

声をかけると、そろそろと距離をつめてきます。

「かぼちゃの中、見たことある?」

「このかぼちゃ、スーパーで売ってるかぼちゃと違うんだよ」

「ほら、いま、穴があいたよ」

わたしの一言ごとに歩みを進めて、ついには隣まで。2人で、開いたばかりのかぼちゃのお尻を覗きこみました。

ふわふわのワタに、緑色のタネ。少し甘くて、湿っぽいにおい。

「わあ」

男の子の口から、小さく声が漏れました。

「ほら、触ってごらん。手を入れるんだよ」

穴の中に手を入れて、目を丸くしている男の子。もっとだよ、とさらに深いところまで。ワタの間に手をくぐらせて、冷たい感触、つるつるするタネを取りだします。

「すげえ」

囁くようにつぶやかれたその言葉が、男の子の心からの声で、なんだか嬉しくなりました。

 

知らないことって、たくさんある。あのにおいも、その色も、この感触も。鼻を寄せて、目を見開いて、手を伸ばすだけで、世界はもっと面白い。その新鮮な感動を、お姉さんになってもおばあちゃんになっても、いつまでも大切にしたいと思うです。

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