お菓子づくりは人生
お菓子づくりと人生は似ています。
もともと、大学の夏休みに暇を極めたのをきっかけに、お菓子づくりが好きでした。ご飯を愛情で作るとしたら、お菓子は化学。途中で味見ができるわけではないし、温度や程度を見誤るとまったく残念な代物になります。しかもその結果は、すべての作業を終え、オーブンなり冷蔵庫なりに入れ形を成し、口に運ぶその時にしか知ることはできないのです。実験のようで好きでした。でも、一人暮らしでケーキ1台など持て余してしまい、お菓子作りとは疎遠になっていました。
最近また、お菓子をつくっています。ブルーベリーとクリームチーズのパウンドケーキ。小麦粉と砂糖と卵、それぞれをちょうど1パウンドずつ混ぜ込んで焼き、ブルーベリージャムとクリームチーズを混ぜ込んだケーキです。パウンドケーキを焼くのははじめて。だって、混ぜて焼くだけなんですもの。シフォンケーキとかシュークリームとか、もっと派手で達成感のあるケーキを好んで焼いていました。正直、馬鹿にしていました。まったく今になっては、あの時のわたしの頬を張ってやりたいと思います。
パウンドケーキづくりは「一生物のレシピ」と言われるほど、奥深いものです。材料それぞれの温度を誤るとびっくりするくらい膨らまないし、混ぜ込みがあまいと舌触りがよくありません。しっとりとして、それでいて高さのあるパウンドケーキを生み出すために試行錯誤し、購入した1キロの小麦粉はあっという間になくなりました。
トライ&エラーしかありません。近道はなく、諦めれば「その程度」。やればやるだけ結果がでます。
これすなわち、人生。
しみじみと感じながら、わたしは今日も卵の温度を入念に確かめ、バターを練り、乳化させ、オーブンのなかでじわじわ膨らむケーキを睨みつけるのでした。