ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

苦悩の一般化

今夜はテレビを見ます。

 

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劇作家の鴻上尚史さん。

彼の本を買いました。

 

 

寄せられた人生相談に回答する鴻上さん。「ほがらか」とありますが、せいぜい「ほがらか」なのは鴻上さんの文章からにじみでるお人柄くらい。相談内容は至極真面目で、切実で、深刻なものばかりです。

といっても、「妻が私のアイドル好きをなじります」という54歳男性の相談には、正直ちっとも共感しません。わたしにも好きなものはあるし、人に知られたら眉を顰められるかもしれないと危惧する趣味があるし、それを否定されたくないという気持ちがあります。けれどそれなら秘密にするし、そもそも50歳になったときも変わらずそれが好きかと言えば疑問です。でも、相談者の男性は至極真面目で、切実で、深刻。それについて鴻上さんは「それでね、○○さん」と語りかける文章で説くのです。

 

わたしは大学で心理学を学びました。

「心理学」といっても様々で、大学のたった4年間では数多の心理学の上澄みをなめた程度。もちろん、カウンセリング論もなめました。

だから、「よく友だちの相談をうけるの」という女子とか、民間資格のなんちゃらカウンセラーとか、果ては占いの類にも懐疑心があります。

でも、鴻上さんの人生相談は好きです。

読んでいるうちに「そうかもしれない」という気持ちになるのです。

老若男女いずれの相談においても共感して、納得して、生きる糧を得た気持ちになるのです。

 

なぜ、鴻上さんのほがらか人生相談は、ほがらかに受け入れられるのか。

鴻上さんは、54歳男性の相談もほがらかに紐解きます。「好きなことを人生のパートナーに理解してもらえない男性」と「人生のパートナーの最大興味をアイドルに取られた女性」という関係図。これは、わかる。相談者の男性の苦悩も、奥さんの苦悩もわかります。

真面目で、切実で、深刻な苦悩も、紐解けば一般化されうる問題なのです。そして一般化されさえすれば、イチ読者でしかないわたしでさえも共感して、同情して、鴻上さんの回答に納得して、後押しされて、おまけに生きる糧を得た気持ちになる。

 

そんな人生相談をする鴻上尚史さんを、もっと知りたいと思ったのです。