ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

ワニくんが炎上して良かった

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いま話題の火葬ワニ。

炎上理由がさまざま考察されていますが、「日常で他意なく嗜んでいたものが、気づかぬうちに消費行動へと繋げられていた」という点が最たる理由ではないかと考えます。

人は、サービスをサービスとして認識し消費します。サービスを提供する側、享受する側の相互に認識の差異が生じれば、契約不履行、裁判沙汰。それが、ワニ君の炎上。

享受する我々は、無料のSNSサービスによって良質なコンテンツを得ていました。巧みな構成と爽やかなストーリーに感動し、声援を送るように毎日更新を楽しみにしていました。しかし、提供するワニくんサイドは、華々しいエンディングとともに怒涛の消費行動をつきつけます。裏切られた気持ち、契約不履行。

 

電通案件とか、死の浪費とか言われるけれど、電通は100日前からそういうものだし、死の価値を問うなら恋人を殺してお涙頂戴するラブストーリーを駆逐してほしい。

これが「死まであと○○。提供:電通」とか、死まで50日あたりで人気を理由にした商業展開をにおわせていれば、ここまで炎上しなかったでしょう。「100日見せて結局金か」という契約不履行が、最たる炎上理由であると考えます。

 

しかし、わたしはこの結果に「良かった」と思っています。

まだ、契約不履行を「不履行」と認識するだけの判断力がインターネットユーザーに残っていて「良かった」。

 

正直、ワニくんが死んで商業展開が成されたとき、「こういうマーケティングもあるのか」と感心しました。100日かけて無料SNSでコンテンツを醸成し、一般に馴染ませて華々しくお金に換える。時流を組んだ新しい売り方だと思ったのです。そして、少なくともわたしは投資しないとも思いました。「こういうマーケティング」に良い気持ちがしなかったのです。

 

しかし、ワニくんは炎上しました。

片手で持つ携帯端末で、画面を上から下までスワイプすれば必要情報を無条件に享受できる昨今、不合理を不合理として認識し、行動できる余地とそのための知識が、わたしたち個々人に求められています。

ワニくんの炎上は、広くネットリテラシーを問うた良質なコンテンツでした。今回は踊らされなかった。けれど、もし、あと数年後に100日の余命を宣告されたワニくんが登場していたら。ワニくんの火葬を経て、インターネットとの正しい付き合い方を思いました。