ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

午前2時の憂鬱

午前2時、失敗しました。

日々の怠惰が仇となってカタチを成し、目前にまざまざと横たわりました。心臓がどくどくいって、体温が1度一気に下がって、爪先が震えてスマホの画面にあたり、カツカツと音をたてました。

窓の外は静かで、時おり車が走り去るくらい。遠くで、寝ぼけた鳥が声を上げます。静かな夜のまんなかで、わたしは1人。血がぜんぶ頭に集中して、思考をぐるぐる行っては過ぎてをくりかえし、遅い時間だというのに瞼が落ちません。

どうしよう

どうしよう

どうしよう

ベッドに横たわりながら、毛布を丸めて抱きしめ、考えます。考えても仕様がないけれど、考えずにはおれないのです。

 

気づくと、朝でした。

腕には毛布のあとが残り、身体は強張って、でも頭だけはクリアでした。起き上がることがこんなに困難な朝もそうありません。

開け放した窓からやわらかな風がふきこんで、レースカーテンをきらきらさせています。青い草と花の濃いにおいが、肺をいっぱいに膨らませました。車のエンジン音、散歩の犬の声、隣人が朝の支度をする音が、人の存在を感じさせます。空の青と陽光が目を焼いて、10分もそうしていると、ふいに、身体が軽くなりました。

ストレッチして、シャワーを浴びて、朝ごはんを食べて、身支度を整えて家を出ます。

いつもどおりの会社、いつもどおりの仕事、他愛のない会話、笑い声。

陽が暮れる頃には、すっかり気持ちがもちあがっていました。

 

午前2時は、いけない時間。

世界にひとりぼっちであると感じられて、答えを求めてやみくもに彷徨って、夜の淵のそのさきに落ちてしまう時間。

だから、午前2時に物事をあれこれするのはいけない。

大人しく、布団に入らなければならない。

わたしはこのさきの人生で、幾度となくそのことを反芻しながら生きていくのでしょう。けれど、それに懲りてはいけません。何度でも夜の淵にしがみついて、決して、午前2時の憂鬱に落ちてはいけないのです。反省。