ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

とうきび

じゃがいも、とまと、きゅうり、なす。

幼いころ、小学校の畑や母がつくる家庭菜園で収穫した野菜です。陽が高くなるまえ、気温が上がりきらないうちに雑草をぬき、陽のかげる一日のおしまいにジョウロいっぱいの水やり。夏のあいだにコツコツと育てた作物たちを、この手で手折る瞬間の感動はひとしおです。スーパーの蛍光灯の白い明かりのもとで見るより、青空のもと緑の葉の間から覗く野菜たちはよっぽど鮮やか。ふっくらと肥った実は夏の強い日差しのもとにつやつやして、もぎ取ったヘタと茎のあいだから、あおい緑のにおいがします。

 

先日 仕事で、子どもたちの野菜収穫ツアーに同行しました。晴天のもと、汗で髪をはりつかせながら、畝の間を探検するように一列で歩く子どもたち。立派に実った野菜を収穫しては、口へ袋へ詰めこみます。熟れたトマトの実をひとくちに頬張るその顔とトマトでは、どちらが赤いかわかりません。

「ふだんと比べたらびっくりするくらい食べる」とお母さんたち。「もっと食べる!」と子どもたち。

 

とまと、じゃがいも、きゅうり、そして、とうきび

ズラリと整列したとうきび畑は、子どもたちの背をゆうに超します。ちょうど彼らの目の高さくらいに、両手でもってまわるくらいの実がなっていて、あっちをぎゅ、こっちをぎゅ、と掴んでは、より大きなとうきびを探します。

「これがいいんじゃない?」

わたしの声に集まった子どもたち。それを囲んでカメラを構える大人たち。

ぐん、と小学5年生の女の子が体重をかけて実を倒すと、ばしゃっという音とともに、立派なとうきびが彼女の腕のなかに。音は、とうきびのヘタと茎のあいだから、手折ったその勢いで噴きだした水でした。

肥沃な土から吸収された水分が、茎を伝って実を肥らせる。

植物の生命力と、それをいただく有難さを、強い日差しのもとに学んだ夏の日です。