ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

朝の歌

雪が降り始めて、ストーブをつけようかと迷うこの時期、思い出す朝があります。

高校時代。
わたしは道南の実家で、東と南に窓のある大層陽当たりの良い部屋に寝起きしていました。自室と言っても高校生。日中は学校だし陽が暮れてから家に帰るので、その窓から太陽を見るのは休日か早朝くらいでした。ひときわ記憶に残っているのは朝陽。それも、冬の陽の出です。

高校時代、地域で1番の進学校に、当時持てる限りの意地で入学したわたしは、帰宅した端からベッドに身をゆだね、勉強するといったら専ら早朝でした。けたたましい目覚まし時計でも起きられず、おかあさんの「何時だと思ってるの!?」という鬼の形相に起こしてもらうこともしばしば…あの不快極まりない目覚まし音は、7年を経た今でも耳元で鳴るようです。

宿題と復習と予習をこなす朝は、夏も冬も関係ありません。早朝の、青を帯びた薄暗さのなかで机に向かい、デスクライトの白い明かりに眉をひそめ、いつしか机上より部屋の中のほうが白みを帯びる瞬間に「今日が来た」と思うのでした。
その日々は高校3年間続きましたが、思い出はいつも冬。時にはテスト期間、時には恐ろしいあの先生の授業日、時には指名されそうな席番の日…どの朝も、やはり冬なのです。

温い布団を惜しんで腰に巻き、目を擦ってノートを開き、眠気覚ましに音楽をかけ、何のためやも知れぬ義務感に任せてペンを走らせていると、ふと闇に覆われていた視界が白く広いことに気付く。
その時に流れていたこの曲と、まっすぐに登る朝陽、それを受けてきらきらする、住宅街に切り取られた太平洋。

その光景が、日本海とともに暮らす今でも思い出されるのです。

 

Hellogoodbye

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