ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

ささくれ

この時期は本当にだめ。

何がだめかって、乾燥して手指が白くなって、爪の際の目立つ皮をひくと、ああほら。こうしてできた傷から血がにじんで、いけないと思いながらもまた指先をこねて。ちゃんと痛いのに、2、3日したら治るものだから、繰り返し。

 

幼いころに母から口煩く言われました。

「皮むくんじゃない!」

「ほら、また手いじってる」

「バイ菌が入って指を落とすことになるよ」

指を落とすというのはさすがに言い過ぎだろうと思いますが、当時は本当に恐ろしくて、血まみれになった指先に絆創膏をはってもらいながら痛みとは違う涙を目にためたことを覚えています。

この歳になると、年がら年中指先に絆創膏をはることはなくなりましたが、それでもやっぱり、たまに薬をぬって眠ります。乾燥するこの時期はなおさら。

 

どこかで聞きました。無意識に指の皮をむしってしまうのは自傷行為の一種で、病気なのだと。自傷行為というのは、リストカットはじめ故意に自らを傷つける行為と理解していたけれど、自らを傷つけることで精神の安定を図る行為とするならば、まあ、わたしのこの指にこさえた傷も自傷行為なのでしょう。

 

きょう、仕事でお会いした方の親指が不自然に荒れていました。朗らかで、笑顔が印象的で、優しい話し方をされる女性。年配の女性でしたから、もしかしたら水仕事やら乾燥やらで肌荒れするのかもしれません。でも、彼女の親指は、爪のところから広がるように不自然に皮がむけて、むけた先でぷつん、と血の赤が滲んでいました。わたしは、その傷をよく知っています。

 

わたしたちの指先がなんの問題もなく自然に癒えて、痛みも苦しみも感じなくなればいいと思います。そして、ついいじってしまうその指先が、2度と血をだすことがありませんように。

そのために、まずはこの長く冷たくやたら乾燥する冬が終わってください。なにとぞ。