好きの背景
昨日、帰宅したのは22時前でした。
飲んで帰るには早すぎるし、仕事で遅くなったわけではありません。仕事終わり、残業する先輩の隣で、先輩のサブスクIDを借りてアニメを見ていたのです。先輩おすすめの、アマゾンプライム限定公開作品でした。
「これは、名作!」
いつも先輩は、わたしが映画の感想を鼻息荒く話すのを聞いてくださいます。そして先輩も、鼻息を荒く作品をオススメしてくれるのです。
「謎が謎を呼ぶ展開は胸熱」
「どんでん返しが待っているんだけど、これも最高」
「音楽がまた良くて」
…そこまで言われると、見たくなるじゃないですか。
わたしが食いついたのを見計らって、でもサブスクに加入していないわたしのためにわざわざIDを貸してくださって、仕事終わり、先輩オススメの一作を見ました。
面白かったです。名作と言われるのもわかります。でもなんだか、この「作品に対する感動」より、別の何かに胸が満たされていました。
先輩が、目をキラキラさせて、語調強く、作品の魅力を語る姿。作品を見ながら、ここ先輩が言ってたシーンだな、とか、先輩が好きそうな表現だな、とか考える時間。それらこそ、わたしの興味を強くひきました。
人にオススメされることが好きです。
それが、近しい人ならなおさら。オススメされた作品が、わたしにとってイマイチだったとしても「見て良かった」と思います。それは、オススメしてくれたその人の「好き」という気持ちと、それほどに感情を動かした片鱗を見ることができるからです。
どうしてそんなに「好き」なんだろう。
どこが「好き」なんだろう。
これを見て何を思うのだろう。
そう考えると、オススメしてくれたその人の背景がぐっと広がります。
わたしも、そのアニメの魅力を鼻息荒く語りました。
先輩の「好き」を共有したことを伝えるために。
先輩は、満足げに鼻の穴を膨らませました。