ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

あなたの世界では“そう”なの

生きている限り世界は広がりつづけていて、その広大な可能性に、いつも驚かされます。驚かされたのちに笑顔になる世界もあれば、眉根を寄せる世界もある。先日は、眉根を寄せました。

「あなたの世界は“そう”なの」

そうも言っておかないと、やっていけないでしょう?

 

プライベートでも仲の良い取引先でした。ざっくばらんな話ができて、そのぶん仕事もスムーズで、それはやはり、距離の近さゆえでした。

ある日、午後5時を少し過ぎた頃に取引先から電話。

「明日、取引先のA社が3時間ほど時間をつぶすのに、御社の応接室を貸してくれないか」

田舎なのでノマドワークできるようなカフェはなく、取引先より街中に位置する我が社、3時間後の用事にもアクセスが良いとのこと。けれど、A社とわたしは顔を合わせたこともなく、小さな我が社に応接室が2つも3つもあるわけではありません。

ごめんなさい。

 

感化されやすく、感情を動かされやすい子どもでした。幼いころは特に世界の広大さを知らないので、次から次へと開ける不可解な世界への扉に疑問符を浮かべ、傷つき、その傷がなぜついたものかもわからずにいました。新しい世界には、それまでわたしが常識と感じていたことは非常識であったり、知らないルールが存在したりします。それは世界をひらけばひらくほどに増えて、この無限大の世界において、もはや終わりもなければ共通の正義もありません。

それならば。

「あなたの世界は“そう”。でも、わたしの世界では“こう”なの」

そうして強い気持ちで境界を明確にしていくべきと思うのです。長年つちかって、正義と信じて築きあげた世界を、何処の誰とも知らないあの人の世界にすりあわせる必要があるでしょうか。もちろん、妥協によって均衡を保つことは大切だけれど、築いた世界を侵す必要はありません。

世界は、無限にあるのだから.