小学生に絵本を借りた
小学生の友だちがいます。
思い出の絵本のはなしになって、彼女の口から知らないタイトルがあがり、後日実物をもってきてくれました。
5冊のシリーズに、同じ世界観で別のキャラクターが主役の番外編まで、全部で7冊。絵本といえどハードカバーで膝に乗るサイズのそれらは重たかったろうに、「これです」と頬を赤くしてオレンジ色の紙袋をさしだす姿が可愛くて、ありがたく受けとりました。
両手でひろげないとブラリと落ちてしまいそうな背表紙、ビリビリ破られた遊びページは綺麗に貼りなおされ、「やだ、誰かイライラしてたの」とおかあさんが笑うそのページは、黒のクレパスでぐるぐる落書きされていました。2人兄妹である彼女の幼い頃が垣間見えたようでした。
ページをめくるたびに
「あ、この子 実はこっちの本で…」とか、
「誰か覗いていますよ」とか、
絵を指さす彼女が、なんだか新鮮。きっと幼い頃、おかあさんに同じようにして読んでもらったのでしょう。
そういえば、わたしの前ではしっかり敬語で大人顔負けの良いリアクションを見せてくれる彼女だけれど、1人で大人ばかりのところへ出掛けるのはちょっと…と躊躇っていたというおかあさんのお話とか、この度思春期真っただ中のお兄ちゃんに心配になるくらい全力でからんでいったりとか、年下の子の前では大げさなくらい構いたがる姿とか、わたし以外の大人の前では割と抑えめのリアクションをとるところとか…友だちには、友だちなりの様々な一面があって、しかもそれを小学生にしてすでに使いこなしているのだなと、絵本の文字を追う視界が細くなりました。
「この子かわいい!」
わたしが指をさすと、
「この子!なんて名前だっけたしか…」
「おじぎちゃん!」
顔を見合わせて、2人で笑いました。