ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

負け戦

「あいちゃん、試験に落ちたことある?」

もう8年近くのつきあいになる美容師さんが言いました。そういえばわたしは、試験らしい試験に落ちたことがありません。いえ、落ちそうだと思った試験は早々に受けない選択をしてきました。ただただ、負け戦から逃げてきたのです。

 

3週間くらい、ブログの更新をお休みしていました。2日に1回の更新を始めて依頼、こんなに長いお休みは初めてです。何が起こっていたかというと、国家資格の試験を受けていました。さすが国家試験、半年間の講座の受講と筆記論述実技のコンボに、精神的にも脳みそ的にもヤられていました。そして半年間の苦悩から、一昨日解放されました。

 

筆記論述試験は先週に済ませていて、回答もすでに発表されています。しかしわたしは、どうにも答え合わせができずにいました。

不正解が正解を上回っていたらどうしよう。

みんな合格点に届いたと言っているのに、わたし1人取り残されていたらどうしよう。

半年間の苦労が、無駄だとわかってしまったらどうしよう。

 

そんな胸のうちを、髪を切ってもらいながら話しました。すると美容師さんはあっけらかんとしています。

「わたし、美容師の試験に3回落ちていてね」

美容室さんの顔は晴々としていました。それは、もうすでに終えたことだから笑い話にできるのかもしれません。でもたしかに、わたしはいつも負け戦とわかった戦いから逃げてきました。大学受験も就職試験も、実力以上の挑戦を避けてきました。だって、わたしの努力が無駄だとわかってしまったら、わたしはどうしていいかわかりません。不合格という事実に、必死で積み重ねてきた努力を否定されることが、何よりも恐ろしかったのです。

 

「落ちてもだいじょーぶ!」

そう言って、美容師さんはわたしの前髪をジャキンと切り落としました。