ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

「わかる」ことが増えた

嫌いだった歌を、好きになりました。

 

邦楽はつい歌詞を追ってしまうので、どろどろと舌に残るラブソングや常套句を並べただけのリズムは、そのうち聞かなくなります。メロディや音に惹かれても、1週間もすれば別のプレイリストをつくっているのです。

リリース当初その歌は、歌詞に全く共感を得ませんでした。ゆったりとしたテンポと透き通るようなボーカルが美しいと感じるものの、何を指して、どんな気持ちで、何を歌っているのか、もうさっぱりわからなくて。歌詞の一字一句が耳にへばりついて、端正なミュージックビデオにさえ、違和感を覚える始末でした。

 

でも 、2ヶ月後。

わたしはその歌をリピート再生しています。

リリース当初「わからない」という理由で聞かなくなった歌が、2ヶ月の間に「わかる」に転じたのでした。

 

「わかる」ということが、ずいぶん増えました。

今年で25歳。それなりに様々経験したようで、本を読んだり映画を見たりするとなおそのことを顕著に感じます。登場人物や情景や構成に、自分の記憶と紐づく既視感を覚えて、真偽の定かでない深読みをして、作品をさらに深遠なものに感じるのです。…端的に表せば、なんにでも都合のいい解釈をして、共感して、「わかる~!」と連発する鑑賞スタイル。

でもこれってすごく興味深い。

1本の作品を前にして、それまでは何を指し、どんな気持ちで、何を言いたいのか、もうさっぱり「わからない」状態だったのが、わたしの日常に起きた出来事ひとつに、急にしゅるんと紐解かれて「わかる」状態になるのです。百聞は一見に如かず、というけれど、一見が百聞を関連付けて、さらに味わいを深めているのです。

 

何にとっても100%理解したような顔で共感を示し声を高めるのは大層稚拙に映りますが、日常生活で自らの経験値向上を測る数少ないイベントですので、どうかご容赦ください。わかる。

よるのあと

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