ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

フランス映画のジレンマ

「〜〜〜」

ブロンズの美しい女性。白い肌に映えるリップはふっくらと紅く目を引きます。その唇からこぼれる音は、日本語とも英語とも違うリズム。フランス語でした。

 

映画を何本も見ていると、制作国の傾向が目につくようになります。よく言われるのは、インド映画。ストーリーの最中、唐突に歌って踊りだすインド映画はちょっと特殊で、元気をもらいたいときや楽しい雰囲気を演出したいときに好まれます。

しかしまあ、映画を選ぶときに制作国から選ばれる方は、あまりいらっしゃらないでしょう。監督とか俳優とかジャンルとか、映画を選ぶ手がかりはたくさんあります。

だから、何気なく手に取った映画が「いかにも」フランス映画で笑ってしまいました。

 

美しく、絵画のようなカット。

叙情的なストーリー。

作品全体に漂うどこかミステリアスな空気感。

そして、多くを語らず「わかるでしょ?」と言わんばかりの演出。

これこれ、フランス映画。

これ、わかんないんだよなあ。

 

わたしは、フランス映画について「よくわかんない」という感想を抱く傾向があります。美しいカットもストーリーも空気感すらも好ましいと思うのに、観終わったあとその魅力を語ろうとすると、どうにも言葉がでなくなってしまうのです。それはきっと、映画が語りかける「わかるでしょ?」を受け止めきれていないから。

 

言葉も文化も異なる国から投げかけられる演出を読み解く術を、わたしは持ち合わせていません。俳優のセリフや巧妙なカットでは伝えられない、モノローグですら補完しきれない言外のメッセージを、わたしは見送っています。映画の魅力を100%享受していないということです。そう気づいたとき、たいへん悔しい心地がしました。悔しいからこそ、わたしはきょうもフランス映画を見ます。