ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

僕らの生活

ドライブ。

まっさおな空に浮かんだ雲は、ぽっかり大きくふくらんでいます。その影が道路に落ちて、ずいぶんゆっくり過ぎていきました。車はすぐに追いついて、通りぬけるたびに、車内が陰ります。

田んぼのまんなかの1本道。国道だけど片側1車線で、ガードレールはありません。道路から外れればすぐに畦。若い緑の稲が頭をもたげています。水面はおだやかで、空、雲、遠くの山まで、鏡のように映しました。青、白、緑、すべての色が生き生きと鮮やかに眩しくて、目を細めます。

 

街まで、南へ。

田舎町をとびだしました。まちとまちの間には、田んぼや畑や山や野原があって、景色が混んでくるのはもっと先。全開の窓からふきこむ風が、花のような太陽のような香りを連れてきます。埃くさい冷気をふくカーエアコンはオフ。車のスピードにならった風がさらう髪をかきあげてから、朝きちんとセットしたことを思い出しました。

 

疾走感のあるメロディに、やわらかいボーカル。

カーステレオからは、お気に入りのバンド。家で1人聞くうちに覚えた歌詞が、自然と口からこぼれます。

 

最高の夏の日。

 

曲を聞いた瞬間に、 その景色が浮かびました。

ウイルス禍にリリースがのびたアルバムは、春のおわりに発売されるはずでした。わたしはそのサウンドで車の中をいっぱいにしながら、夏の日のドライブを楽しむはずだったのです。延期になった発売予定日は夏のおわり。でも、収録曲の一部がオンラインライブで先行発表されました。

そのとき。

夏の日のドライブ、歌を口ずさむ自分の姿が、まるで過去に経験した思い出のようにくっきりはっきりと浮かんで、脳みそにはりつきました。

このたびの先行配信を機に、週末、あの日みた光景を実現させます。

 

僕らの生活

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