ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

小学生のわたしよ

あいかわらずレンタルビデオ店に通っています。そのときの気分で2本とか3本とか5本とか6本とか選んで、レジに持っていって、わたしも言われ慣れていれば店員さんも言い飽きているだろう月額プランをお勧めされて、自動ドアへ。その途中に、レンタル落ちの映画やらアニメやらを並べたラックがあって、たまに眺めて帰ります。

 

目に付いたのは、6枚組のアニメDVD300円。わたしが小学生の頃、毎週欠かさず見ていた作品でした。土曜日の夕方、夏の夕暮れ。沈みかける陽が反射して見づらいテレビ画面にかじりついていた記憶があります。

作品の評価とは見る人の主観によるもので、その人が過去に見てきた作品とか、人生における経験とか、単純な好みとかで決まると思うのですが、当時小学生のわたしは作品を評価するうえでの基準となる経験値がまったくない状態で「この作品は傑作だ」と確信したのでした。奥行きある世界観、緻密なストーリー、共感を誘う登場人物と、作品に一貫して流れる不思議な空気が、成長過程として感性を磨く真っ只中にあったわたしをかっさらっていったのでした。

 

12年後。

わたしは、映画鑑賞を趣味として、中学高校大学社会人とえっちらおっちら経験を積んで、それでも好みはあんまり変わっていません。果たして、小学生のわたしが評した「傑作」は、今なおやはり「傑作」なのでしょうか。そういえば、当時わたしがいくら勧めても周囲の反応は薄かったし、放送終了後、頻繁に再放送されることはありませんでした。小学生の“あい”は、赤く染まる実家の居間で、ただ静かに真っ直ぐに「傑作」を信じてテレビに食いついていたのでした。

果たして果たして。

答え合わせをするような気持ちで、再びレジへと向かいました。

 

電脳コイル アーカイブス

電脳コイル アーカイブス

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  • 出版社/メーカー: スタイル
  • 発売日: 2018/09/05
  • メディア: ムック