ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

難しい朝

久しぶりに、完全な化粧をしました。

この1ヶ月、化粧をすると布マスクに色がつくので、簡単なパウダーとアイメイクのみで済ませていました。その日は出かける予定で使い捨てマスクをつけたので、しっかり化粧をすることに。つまり、下地をぬってファンデーションをのせて、気になるところをコンシーラーでカバーして、シェーディングとハイライトをいれ、服の色味からアイメイクを考えて、シャドウとアイライナー、マスカラをのせ、眉を整えアイブロウをひき、リップを選んで際まで筆をなぞらせました。

ふう、

唇をあわせて馴染ませる頃には、ため息をひとつ。

化粧って、こんなに難しかったっけ。

薄化粧が続いていたので肌コンディションは良く、リップは買ってからつける機会を逃していた春の新色で、思った以上に綺麗でした。しかし、ファンデーションとコンシーラーを馴染ませるのに苦労し、シェーディングとハイライトの入れ方をすっかり忘れてわざとらしく、使いたいリップのためにシャドウの色に頭を悩ませて、この1ヶ月つづけてきた簡単な化粧のたっぷり3倍は時間をかけました。慌てて髪を整えて、鞄をひろって上着をひっかけ、化粧ポーチにその日のリップを入れ忘れたことに気づいて部屋に戻って。バタバタの朝。

 

それでも、そうして出かけた日は、すごく良かった。

臆することなく顔を上げて道を歩き、正面から堂々目を合わせて会話をし、鏡にうつるわたしは幾分胸を張っていました。自分に自信がもてるというだけで、世界は明るく輝いています。完璧な化粧によって得られる世界は、手がかかって、頭を働かせて、時間を要するぶん、すごく良い。はやく、この難しい朝をいつもどおりに迎えられる日がもどってくることを願っています。