ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

水たまりを蹴散らして

ひさしぶりに自転車に乗りました。

車を点検に出してしまったので、その代車です。毎日出社していた格好は自転車に不向きで、ロングスカートのスリットから素足がでて、髪は風に煽られ視界を阻み、道にできた水たまりを避けるのもひと苦労です。気を抜いた瞬間にぱしゃんと飛沫。ぎゃあ、スカートの裾を手繰ります。

そのとき、小学生のわたしが顔を出しました。

 

放課後、暮れる陽を惜しむように住宅街を乗り回した自転車。小学生のころ、近所には5、6人の友だちがいて、その妹がいて、妹の友だちがいて、それはそれは賑やかでした。変身ヒロインごっこRPGの主人公ごっこに夢中になって、こげばこぐほど強くなる向かい風、立ちこぎをしてやっとの坂道、水たまりがあろうものなら率先してその真ん中へつっこんで、水しぶきに両足を広げました。当時わたしは髪が短く、毎日ジーンズ。スカートをはくことに、恥に似た抵抗を感じていたように思います。

 

わたしはいつから、髪を伸ばしはじめたんだったかな。

本当は、ずっと憧れていました。風になびくサラサラのロングヘア。肩にたらした長い髪にリンスを馴染ませるアニメキャラクターの仕草を真似しようにも、わたしの髪は耳の上からチョンと外はねして、その仕草を要しませんでした。

いつから、スカートをはきはじめたでしょう。毎日ジーンズかジャージで登校した小学校でしたが、今ではスカートをはく日が8割です。

わたしはどうして、最高速まで自転車を飛ばして、スピードのままに水たまりに突っ込んで両足を大きく広げる、その面白さを忘れていたのでしょう。そのためには、肩まである髪は邪魔だし、スリットの入ったロングスカートなんてもってのほかだし、でも、それが面白いという記憶だけは、胸の中でくすぶっているのです。

 

どちらがどうということもないけれど。

夏の日、まったく別の場所で笑う、小学生のわたしを見ました。