ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

春のきいろ、夏のきいろ

北海道の左上は、美味しいお米も自慢です。

日本海沿いの街から山際へ走ると、道の両脇が一面、田んぼにかわります。田んぼは、季節を映します。春は静かに水をたたえて鏡のように、夏は青々とした稲を揺らして、秋は一面黄色の海、冬は静かな雪原が広がります。そこへ車を走らせると、季節のまんなかをかきわけて行く気持ちになるのです。週末ごと、出かけるたびに、少しずつ様子をかえる田んぼが好きでした。

 

けれど今年は違います。

ウイルス禍に出かける頻度がぐっと減って、たまに見る田んぼは、その都度ガラリとかわります。何度も通っている見知った田んぼ。でも、まるで知らない田んぼ。

 

けれど、たまに見るからこそ気づく変化もありました。

ひさしぶりの、田んぼ道。秋の虫が忙しく鳴く、夏の終わり。稲穂がずいぶん、すすけた緑をしていました。以前見たのは、春の終わり。まだまだ若い緑の苗が、植えられたばかりの田んぼで、陽の光にきらきらしていました。夏まっただなかの苗よりももっと黄色が強くて、陽に焼けていない新芽の緑。季節が進むごとに青が強くなって、太陽に負けない緑をして、秋にはすっかり稲穂をもたげる黄色になります。秋を迎えるまでの稲穂はもちろん緑色で、黄色にかわる過程の色があるのです。それは、春に見せた若い黄色より、ひと夏を経た成長を感じさせる黄色。これからこの黄色が強く残って、緑色は見る影もなく抜けきって、しゃらしゃらと稲穂が、風に音をたてるのでしょう。

 

田んぼは、やっぱり季節を映していて、やっぱり美しいのでした。

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