ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

ガイドさんはそのへんにいる

何人かで美術館や博物館に行くと、決まって集団から遅れてしまいます。みんなが売店コーナーを隅々まで見てまわり、出口に設置されたソファなんかでお喋りしている頃にようやく見終わって、「まだ中にいたの!?」なんてびっくりされます。

わたしにとって、生きた言葉で作品を解説するガイドさんは特別な存在です。その場でその空気感のもと、適切に作品を説くガイドさんの言葉は記憶に残り、わたしの作品体験をより深いものにしてくれます。

 

先日、北海道三笠市の奔別炭鉱へ見学に行きました。閉山から50年ほど。閉業後の立坑密閉作業中に起きた爆発事故の影響で、柱が剥きだしになっています。

初開催のまちのイベントで、わたしのお目当ては、学芸員さんによる奔別炭鉱ガイドでした。

始まるまで会場内をぶらぶらしていると、ブースの前でお姉さんに呼び止められました。「石炭の重量当てクイズをしませんか?」クイズのかたわら、石炭や炭鉱に関する歴史を伺いました。

そのあと炭鉱の展示パネルを眺めていると、隣におじいちゃん。「おっ、こりゃまだあの辺に残っているよ」炭鉱操業時から地域に暮らしていた建設業者さんでした。思い出話で語られる賑わいは現在に見る影がなくて、夢中で伺いました。

いよいよ炭鉱ガイド。旧炭鉱の周辺を移動しながらの解説はわかりやすく印象的です。ガイドさんの後ろ最前列をキープしてお話を伺いました。

「それでは解散しましょう」となってから、1人のおじいちゃんがガイドさんのもとへ。「この土地は、炭鉱ができる前なんだったかご存知ですか?」ふるくからの地元民おじいちゃんのお話を、ガイドさんに並んで伺いました。

 

わたしは、ガイドさんが好き。作品体験をより深く印象的なものにしてくれます。ガイドさんはわたしのなかで、特別な存在です。

でも、地域を語ることのできるガイドさんは、案外そのへんに、多くいらっしゃるのでした。

 

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