ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

良い映画体験

「よくわからない」と言われる映画を見ました。

映画が生まれて100有余年。歴史的に評価される作品は、様々な人のコメントとともに触れることができます。今日は何を見ようか、と探すなかで「感動の超大作」や「ラブロマンスの金字塔」なんてコメントに惹かれて手に取ることもあるでしょう。わたしもその日、映画を選びながら思い出していました。

 

「よくわからない」

「難しい」

「テーマが見えない」

ポジティブな評価ではないけれど、1人や2人ではない大多数が首を傾げる作品。どれ、どれほどわからないものかと、再生ボタンを押しました。

 

たしかに、難しい。監督は、何を伝えたかったのでしょう。エンドロールが始まった瞬間に、インターネットで映画タイトルとともに「意味」や「テーマ」といったワードで検索しました。万人が理解し、納得することはできないでしょう。

けれど、一貫したテーマと、作品の方向性としてミスリードされていることに気づいた時の爽快感は最高でした。

 

わたしは、「良い映画」に出会いたいと思ってレビューサイトを読みます。けれど、彼や彼女がそう評価しても、たとえ「感動の超大作」や「ラブロマンスの金字塔」なんて枕がついていたとしても、彼や彼女とわたしは、別の人間です。必ず感覚を共有できるとは限りません。「良い映画」とはなかなか難しいもの。

しかし「良い映画体験」は違います。

 

老若男女、満場一致のスタンディングオベーション、誰しもが笑顔というのは素晴らしい作品の証です。けれど、作品を通して、なぜだろう、どういう意味だろう、と考える機会をくれたものは、「体験」として良い。

よくわからなかった、共感しなかった。でも、あの言葉の意味は、どうしてこんな展開に、あのシーンが焼き付いて離れない…そうしてじわじわと余韻を残すものは間違いなく「良い映画体験」です。

 

わたしは、「良い映画」とともに「良い映画体験」を探しています。

 


映画『ロブスター』予告編

 

ロブスター(字幕版)

ロブスター(字幕版)

  • 発売日: 2016/09/15
  • メディア: Prime Video
 

 【感想】

わたしたちは、まず、わたしたちの常識を疑わなければなりません。

人のかたちをしているからといって、同じ思考、同じ行動を起こすとは限りません。主人公の男性を、隣人のようにして見ている時点で、わたしはトリックのなかでした。本作は、まったく別世界で繰り広げられる、SFストーリーです。